メディア等で華々しい活躍で圧倒的な存在感のある方々
私はお会いして話してみたい方が多くいるのですが、その内の一人がオネエの方です。
未だに直接お会いしたことはありませんが、メディアで活躍している姿はよく拝見します。
明るくエネルギッシュでありながら、繊細な一面があり、それでいて冗談を交えながらも的確なコメントをされていて場を華やかにされている印象があります。
もちろんこれは私個人の印象であり、全てのオネエの方がそうではないことは重々承知ですがメディア等で活躍している姿を拝見すると、尊敬の念を抱いています。
今回ご紹介する「大事なことほど小声でささやく」はそんなオネエが登場する小説です。
「カクテル言葉」が心に刺さるメカニズム
オムニバス形式で主要の登場人物6人のそれぞれの視点から物語が展開するのですが、この6人の中でも特に存在感を放つのがゴンママこと、権田鉄雄です。
身長が2メートル超ありマッチョなオネエで、昼はジムに通い夜はジムの仲間が通うスナックを営んでいます。
このジムの仲間が主な登場人物なのですが、それぞれの話にゴンママが深く関わります。
登場人物がスナックで悩みを話すのですが、その答えとしてゴンママはカクテルを作り差し出します。
花には「花言葉」が存在するように、カクテルにも「カクテル言葉」が存在します。
「カクテル言葉」を使い間接的ではありながらも、本質を相手に気付かせるようにアドバイスを送る粋な計らいでエールを送ります。
この言葉に意味合いを持たせるというのを、どこかで見たことはありませんか?
前回の記事の手垢にまみれた言葉を使用していませんかで紹介した、言葉には価値観がベッタリとくっついている「言葉の手垢」のことです。
花言葉もカクテル言葉も人が後付けして意味を持たせた価値観のことです。
手垢にまみれた言葉として、前回は「普通」という言葉を例に挙げましたが、今回の「カクテル言葉」には違いがあります。
それは「言葉の手垢」の背景にある価値観を理解した上で、意識的に使用しているかどうかです。
「普通」という言葉はその背後にある価値観を理解しないまま、多くの人が無意識に使用しています。
そして使用者自身が自覚せずに使用することに対して息苦しさを感じています。
ですが、「カクテル言葉」は使用者が言葉の背景にある価値観を十分に理解した上で、意識的に使用されています。
間接的に相手に伝えることでその言葉の意味を相手が推測し気が付いた時に、送り手と受け手の間に喜びや感動といった心の動きがあります。
「普通」も「カクテル言葉」も価値観がベッタリと付いた「言葉の手垢」ですが、こんなにも反応が変わってきます。
そして直接的な言葉で登場人物の相談に答える場面もあるのですが、その回答もオネエらしい力強さがありながらも、繊細で暖かく心に響きやすいのがとても印象的でした。
作中でゴンママの印象的な言葉は多くありますが、その中からひとつをタイトルに引用しました。
行きつけのスナックのママに会いに行くような気軽な気持ちでこの本を読んでみて、ゴンママが差し出すカクテルと言葉の大人な魅力に酔いしれてみてはいかがでしょうか。
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