クリシェがあなたの本当の気持ちを言葉にするのを濁らせます『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』

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出川哲朗さんから学ぶクリシェ

「やばいよやばいよ」

言わずと知れた出川哲朗さんの代名詞のひとつである言葉です。

この言葉を聞くだけで出川哲朗さんが慌てている様子が自然と頭に思い浮かんできます。

「やばい」という言葉は私達も日常生活で使用しますし、自分が感じたことを一言ですぐに言い表せるので無意識の内にとっさに出てしまう言葉でもあります。

この様な一言で言い表せるありきたりな言葉や表現は、フランス語で「クリシェ」と呼ばれています。

クリシェは便利な分、あまり深く考えなくても相手に感情を伝えられるので言葉による表現を奪ってしまいます。

冒頭の「やばいよやばいよ」がわかりやすい例でしょう。

相手の感情が高まっていることは予測出来ても、何かに感動して「やばい」と言っているのか危機的な状況にいて「やばい」と言っているのか、具体的なシチュエーションが全くわかりません。

クリシェに当たる言葉を乱用すると表面的なことしか言い表せなくなってしまうのです。

今回ご紹介する『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』では、そんなクリシェを使用せずに自分の言葉で表現するにはどうすればいいのかを伝授してくれる本です。

いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。

こちらの書籍はAudibleでもご利用頂けます。

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安直な言葉が表現を濁らせる

本書のタイトルにも採用されていますが、「推し」という言葉を近年よく見聞きするようになりました。

「推し」とは好きな芸能人やアイドル、作品などのことを指します。

そしてそれらを広めたり、楽しむ活動を「推し活」と呼びます。

「推し」は漫画のタイトルに使用され、アニメでも大きな反響を呼んだ「推しの子」など、もはや「推し」という言葉は世間一般に浸透した言葉と言えます。

もしかしたら今この記事を読んでいるあなたにも「推し」がいるのではないでしょうか。

本書の著者の三宅香帆さんも「推し」がいて、「推し活」を楽しんでいるひとりです。

普段は書評家として仕事で文章を書いていますが、プライベートでは推しにファンレターを書いています。

ファンレターは当然長文の手紙を作成するので、いくら好きでも書いている途中に書くネタが尽きて難しそうだと思いますよね。

しかし、著者は推しに書くファンレターのネタに困ったことがないと言います。

ファンレターを始めとした推しを語るときに一番大切なことを以下の通り説明しています。

推しを語るときに一番大切なこと、結論から言ってしまいますが自分だけの感情です。

自分だけの感想とは他人や周囲が言っている事ではなく、自分オリジナルの感想を言葉にすることなんです。

誰かが作った言葉や誰かの広めた感情ではなく、自分だけが感じていることを伝えるのが何よりも大切。

それを伝えることこそがあなたが推しを語る意味になる。

この世にまだない感想を生み出す意味になる。

自分だけの感情、自分だけが感じていることを言葉にして伝える。

ここだけ見ると簡単に出来そうな気がしますよね。

ですが、その言葉をよく見つめ直してみてください。

その言葉は本当に他者の思考や言葉から染められていない純粋無垢なあなたの言葉ですか?

純度の高い自分だけの言葉を作ることの難しさを以下の通り著者は本書で述べています。

何だ、自分オリジナルの感想をそのまま言葉にしたらいいの?簡単じゃん。

と思われるかもしれません。

でも、これって意外と難しいんですよ。

なぜなら人間は、何も考えずにいたら世の中にすでにあるありきたりな言葉を使ってしまう生き物だからです。

クリシェという言葉を聞いたことはありますか?

ある言葉が色々な場面で乱用されたことで、その言葉の本当の意味や新しさが失われてしまったことを表す言葉です。

ありきたりなシチュエーション、ありきたりなセリフ、ありきたりな言葉。

それらをフランス語でクリシェと言います。

日本語には残念ながらクリシェにあたる用語はありません。

あえて挙げるなら、常套句でしょうか。

もしくは、ありきたりという言葉が一番近いかもしれません。

このクリシェは感想を話したり文章を書いたりするにあたって最も警戒すべき敵です。

クリシェこそがあなたの感想を奪うんです。

記事の冒頭でも軽く触れましたが、クリシェに分類される言葉は使い勝手が良くて楽です。

前回の記事の感情を言葉に出来ないのは感情の大部分は非言語によって構成されているからです『感情類語辞典 増補改訂版』の記事でも紹介しましたが、感情を言葉で言い表さなくてもボディランゲージや口調で本心は十分伝わります。

冒頭で例に挙げた出川哲朗さんの「やばいよやばいよ」もボディランゲージや口調で本心は十分伝わりますよね。

今まで無意識に使用していた言葉に意識を向けることで改善出来ます。

本書でもクリシェを意識的に使用しないことで得られる効果を次のように解説しています。

クリシェを禁止した先に自分だけの感想が存在する。

ありきたりなそれっぽい表現を使わずにちゃんと自分だけの感情、考え、印象、思考を言葉にする。

それだけでオリジナルな表現が出来上がります。

クリシェを意識して使わないようになるだけで自分の言葉の純度が大きく上がります。

純度が上がることによって自らの感性も磨かれていくので、よりオリジナリティの高い表現となります。

そしてこのクリシェに分類される言葉ですが、現代になってから生まれてきたわけではありません。

実は平安時代からもうすでに存在して使われていたのです。

「やばい」と似たような言葉は約1000年ほど前からもうすでに使われていた

古語に「あはれなり」という言葉があります。

これってなんか胸がジーンっとする、グッとくる、ワァーって言いたくなるといった感覚を一言でまとめた語彙なんですよね。

胸に何かがグッと飛び込んでくる、そして感情がブワッと溢れる。

溢れた感情はプラスの場合、イコールいいものだと思う。

マイナスの場合、イコール悲しいものだと思う、どちらもある。

良くも悪くも感情が振り切れる体験、それが古語の「あはれなり」です。

昔の人はよくこんな便利な言葉を作ったものですよね。

しかし、現代語には「あはれなり」に変わる語彙がない。

感動したとか、感激したとか、そういった言葉が一番近いですが「あはれなり」が指す感情全てを包括するような言葉はありません。

だから、私たちは「あはれなり」の現代語バージョンとして「やばい」という言葉をいつの間にか発明したのでしょう。

「やばい」ってそれがプラスの感情だろうと、マイナスの感情だろうとどちらかに指標が振り切れているといった意味ですよね。

いい時もよくない時も、何か自分の感情が大きく動くような事態に対して私たちは「やばい」を使う。

あれは古語の「あはれなり」と全く同じ意味なんです。

(『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』より引用)

今から約1000年ほど前から「あはれなり」というクリシェに分類される言葉が存在していたのであれば、現代の私たちが使用するのも頷けます。

実際に「あはれなり」の現代語バージョンの「やばい」は便利ですし言いやすいです。

だけど、「やばい」に頼りきってしまうと今度は自分だけの言葉が生まれなくなってしまう。

では、クリシェを禁止してそこから自分の言葉を作り出すには具体的にはどうすればいいのでしょうか。

その答えは本書でわかりやすく解説しているので、ここまで読んでみて興味を持たれた方はぜひ本書を読んでみてください。

本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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