感情を言葉に出来ないのは感情の大部分が非言語によって構成されているからです『感情類語辞典 増補改訂版』

報告書一覧
記事内に広告が含まれています。

言葉に出来なくても略語が生まれる

「エモい」

突然ですが、この言葉の意味をご存知でしょうか?

「エモい」とは「emotional」が由来である日本のスラングかつ若者言葉。

「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の働き」などを意味する形容詞として用いられます。

上記の説明文はWikipediaから引用した文章ですが、「エモい」を紹介している他のサイトでも概ね同じような説明がされています。

若者言葉であると説明されていますが、似たような意味合いを持つ言葉で世代関係なく使用されている言葉があります。

それは「感動して言葉が出ない」です。

この言葉を一番多く聞く場面と言えばスポーツではないでしょうか。

オリンピックなど大きな大会で優勝したスポーツ選手が試合後に感想を聞かれた際によく耳にします。

「エモい」も同様の意味を持つ言葉ですが、感情はなぜ言葉で表現することが難しいのでしょうか。

今回ご紹介する『感情類語辞典 増補改訂版』は感情を言葉にする際にどんな風に言い表せることが出来り、相手に伝えることが出来るのかを解説した本です。

感情に関する誤解

この本はもともと小説などの創作物に登場するキャラクターが感情を表す時にどのような表現を使用すればより伝わりやすくなるかを目的とした本です。

本書では小説における感情の重要性を以下の通り説明しています。

うまく書けている小説には、ジャンルを問わず、ひとつの共通点がある。

それが感情だ。

感情はすべてのキャラクターの意志決定、行動、言葉の核となり、それらが物語を引っ張っていく。

感情がなければ、キャラクターの人生の旅路もつかみどころがない。

面白みがなくなってしまうのだ。

無味乾燥な出来事が連続するストーリーをわざわざ読もうとする読者はいない。

それはなぜか。

読者は、何よりもキャラクターに自分を重ね合わせ、その感情を体験したくて本を手に取るからだ。

読者は、楽しませてくれるキャラクターと出会い、そのキャラクターが直面する数々の試練を疑似体験すれば、自分の人生にも役立つかもしれないと思って本を読む。

小説を始め、ドラマや映画などは物語の起伏によって登場人物の感情も揺れ動きます。

その描写が私たち視聴者に楽しさや面白さを与えてくれます。

ただ、感情は言葉だけを通じて伝えられるものだと思いがちですがそうではありません。

受け手側の感情に関する誤解を次のように述べています。

人間は感情の生き物であり、感情に衝き動かされて生きている。

私たちが人生において何を選択し、誰と一緒に過ごすのか、どういう価値観を持つのかは、感情に左右される。

また、私たちは感情に刺激されてコミュニケーションし、有意義な情報や信念を人と分かち合いたいと思っている。

情報や感情は会話の中で言葉を通じて伝えられるものだと思われがちだが、多くの研究によれば、コミュニケーションは最大で93パーセント非言語によって行われている。

たとえ感情を表に出さないようにしていても、ボディランゲージや口調で本心は伝わる。

だから皆言葉を交わさなくても人の心を読むのがうまいのだ。

ドラマや映画では視聴者がわかりやすいように大げさなボディランゲージや口調で登場人物の本心を伝えようとしています。

現実では流石にそこまで大げさに表現して伝えてこようとする人は少ないですが、少ない動作でも相手が今どんな感情を抱えているかは十分推測が出来るでしょう。

例えば相手がしきりに時計に視線を落としていれば、「この後何か用事があるのかな」とか「一緒にいてもつまらないのかな」など簡単に相手の感情を推測することが出来ます。

言葉以外にも感情を伝えようとする方法はいくらでもあり、むしろ言葉だけで伝えようとするのが難しいのです。

なので、感情の高ぶりを言葉に出来なかったり、「エモい」という略語だけで相手に伝えようとするのも納得出来ます。

それにそのような発言をされている方は感極まって泣いてしまったり、目を大きく開いて驚きを表したりとボディランゲージだけで十分伝わります。

本書では感情を表す言葉を辞典形式で紹介しているのですが、紹介方法もその意味と実際にその感情になった時に人が取る行動を詳細に記載しています。

共感と同情の違い

感情の類語は同じような意味合いだと思われがちでも、実は言葉によって細部のニュアンスが異なる場合が多いです。

わかりやすい例が共感と同情の違いでしょう。

本書では共感と同情の意味を以下の通り説明されています。

共感とは人の立場になって、人の気持ちを汲み取ること(自分も同じ心境になる可能性もある)。

同情とは人の境遇を思いやり、助けたいと思うこと。

本書にも「共感と同情は似て非なるものである」と注意書きがあり、その違いを次のように解説しています。

共感は、キャラクターが経験した感情を誰かと有意義に共有した結果、その人と結びつきを感じることを指す。

一方、同情はもっと表層的で、人に個人的な結びつきを感じなくても、慰めの言葉をかけたり応援したりできる。

同情は共感よりも表層的で、慰めの言葉をかけたりするが、相手の立場に立ってそうしているわけではない。一方、共感はもっと深く相手の気持ちを思いやる感情で、非常に個人的で有意義な体験である。

同情よりも共感の方がより相手に寄り添った行動であることがわかります。

では、共感と同情で行動の違いはあるのでしょうか。

本書では感情に基づく行動を外的なシグナルと表現し、感情に由来する反応が、身体や発言を通して明確に表面化したもの。

そしてそれは第三者も感じとることができると解説しています。

共感の外的なシグナルは、眉をひそめる、表情がゆがむ(相手のネガティブな感情を共有する場合)、相手の苦しみを自分も感じているかのように自分の胸をさするなどがあります。

同情の外的なシグナルは、優しい言葉、なだめるような口調、きっと大丈夫ですよと言って人を慰めるなどがあります。

共感は相手の立場に立とうとしているので、相手が感じた気持ちを自分も味わっているような反応が見られるのでしょう。

それに対して、同情は相手を助けたいという思いが強く、相手の感じている気持ちを緩和しようとする反応が見受けられます。

本書では、内的な感覚として感情に由来して人間の体の内側に起こる、本能的、もしくは生理的な感覚や、精神的な反応として感情に由来する人間の思考パターンなど、特定の感情を抱いた時の心理状態から実際に取ってしまう行動まで網羅的にわかりやすく紹介しています。

私達に備わった機能でありながら、目に見えない上に言い表しにくい感情。

その感情を様々な視点から言葉で表現した時に何が見えるのか、ぜひご自身の目でお確かめください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました