カプセルトイには、感情を言葉にするヒントがある
モヤモヤしているのに、何がつらいのか自分でもうまく言葉にならない。
書き出してみようとしても、何から書けばいいのかわからず、手が止まってしまう。
そんな時に参考になるのが、意外にもカプセルトイです。
私が初めてガチャガチャを回したのは、小学校の低学年の頃だったと思います。
好きなアニメのキャラクターがガチャガチャになっているのを見かけて、お小遣いからお金を出してレバーを回しました。
中の商品が動くのを見ながら「何が出て来るんだろう」とワクワクした気持ちは、今でも覚えています。
ですが、出て来た商品がお目当ての物だったのかまでは忘れてしまいました。
最近は「カプセルトイ」という呼び名もすっかり定着し、大人が楽しむものにもなっています。
日本カプセルトイ協会によると、2024年度のカプセルトイの市場規模(製造出荷ベース)は約1,410億円です。
2022年度の720億円から、わずか2年で2倍近くに伸びています。
昔から老若男女に愛されてきたカプセルトイですが、その商品開発には、言語化に役立つある考え方が隠されています。
それが「制約」です。
感情がまとまらないのは、出来事から気持ちまでを一度に全部言葉にしようとしているからかもしれません。
カプセルトイの商品開発に学んで、まずは範囲を絞って書くことから始めてみましょう。
今回ご紹介する『読む・聞く、まとめる、言葉にする』(フォレスト出版、2024年6月刊)は、言語化力はもちろん、本を読む力、話を聞く力、情報を整理し言葉にするためのスキルについて網羅的に教えてくれる本です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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言語化は才能ではなく、習慣です
著者の松尾美里さんは、本の要約サービス「flier(フライヤー)」の編集長です。
flierは、ビジネス書1冊の大筋を約10分で読める要約を届けるサービスで、1つの要約はおよそ4,000字です。
書き手の主観が入る書評とは違い、本の全体像をもとに、著者の主張や重要なポイントを忠実にまとめることを目指しています。
本書によると、著者はこの仕事を10年以上続けていますが、最初の頃は要約がうまく出来ずに思い悩む日々を過ごしたそうです。
その中で、著者はインタビューや要約の仕事を通じて、ある気付きを得ました。
「このような表現はきっと言語化の才能があるから生み出せるのだろう」と衝撃を受けた一方、色々な方に取材する中で実はそうではないと気が付きました。
それは言語化が上手な人ほど、質の良いインプットとアウトプットを習慣にしているということです。
(『読む・聞く、まとめる、言葉にする』より引用)
言語化が上手な人は、たくさん読み、たくさん聞いたことを頭の中で整理し、話したり書いたりする機会を多く持っている。
だから、「読む・聞く、まとめる、言葉にする」を習慣にすれば、言語化力は誰でも高められる、というのが本書の出発点です。
このうち、今の私たちに足りていないのはアウトプットのほうです。
スマートフォンがあれば、ニュースやSNSの情報はほとんど無意識のうちに、指先ひとつでいくらでも入ってきます。
一方で、日常生活でアウトプットする機会を、あなたはいくつ思い浮かべられるでしょうか。
職場で仕事の話をする時、友人と共通の話題で盛り上がる時、SNSに映画や漫画の感想を書き込む時、くらいではないでしょうか。
アウトプットは、何かきっかけがなければしようとは思いません。
自分から意識しなければ出来ないから、アウトプットして言葉にすることを特に難しく感じるのです。
言葉にすると、自分の本心に気付ける
とはいえ、ただアウトプットの回数を増やせば質が上がるわけではありません。
本書は、言語化する力を「相手に伝えたいことを考え抜き、的確に相手に伝わるような言葉を生み出す力」と定義しています。
そして、言語化力を高めるメリットとして、①人からの信頼・応援を得やすくなる、②自分の本心に気付けるようになる、③組織やチームが目標に向かう力が高まる、の3つを挙げています。
この中で、悩みを言語化する上で特に大切なのが「②自分の本心に気付けるようになる」です。
本書によると、不安や違和感、焦り、せつなさといった感情や、なんとなく抱えている問題意識は、言葉で輪郭を与えることで、はっきり認識出来るようになります。
言語化は自分の感情を客観視することでもあり、その中でマイナスの感情が和らぎ、本心に近づいていけるのです。
ですが、感情は心では感じていても、それをうまく言葉で言い表すのは難しいものです。
言い表せないから輪郭が掴めず、苦しくなっているんですよね。
「自由に書いていい」が、一番難しい
では、どうすれば感情の輪郭を掴めるようになるのでしょうか。
本書が示す答えは、「制限と制約」を掛けることです。
本書では、上司から「新規事業の企画を考えて欲しい。課題も売り上げ規模も自由でいいから」と頼まれた場面を例に、次のように説明しています。
自由に考えて、自由に書いてと言われても、それは相当な構想力がいりますし、かなりの負荷になるので悩んでしまいそうです。
ポイントをまとめて、何かしらのアウトプットを生む上では、制限、制約が重要になります。
(中略)
アウトプットの目的、テーマ、字数など、制限があるからまとめの質が上がります。
(『読む・聞く、まとめる、言葉にする』より引用)
企画書も、何十ページもあると読む人が骨子を掴みにくくなりますが、「A4で1枚」「スライド1枚」と決まっていれば、ポイントが研ぎ澄まされやすくなります。
同じことは、子供の頃の読書感想文にも言えます。
私は子供の頃、読書感想文がかなり苦手でした。
本を読むこと自体が苦手だった上に、感想が「楽しかったです」くらいしか出て来なかったからです。
それに加えて、「自由に書いていいよ」と言われると、どこから手を付ければいいのかわからなくなってしまいます。
もしあの頃、「あらすじはこのくらいの文量で」「楽しかったなら、どの場面が楽しかったのかを抜き出す」「書く期間は一週間まで」と制限と制約があれば、何をすればいいのかが明確になっていたはずです。
カプセルトイの商品開発で大事にされていること
制限と制約は、仕事の現場でも使われています。
それも、「自由な発想が必要そう」に見える仕事にこそ、です。
その代表例が、カプセルトイの商品開発です。
著者は、おもちゃクリエイターでアイデア発想ファシリテーターの高橋晋平さんに、アイデアが出やすい会議の進め方を取材しました。
高橋さんは、バンダイ在籍時に「∞(むげん)プチプチ」を開発するなど、数多くのヒット商品を世に送り出してきた方です。
すると、ポイントの一つは「ちょうどいい制約条件のお題を設定すること」。
それが出来れば、勝手にアイディアが集まってくるのだそうです。
(中略)
このカプセルトイにおけるアイディアの制約条件は次の三つです。
カプセルに入るサイズ、数百円の値段に収まるもの、一人のお客さんが何度も回したくなるラインナップ。
(『読む・聞く、まとめる、言葉にする』より引用)
サイズと値段が先に決まっているので、考えるのはラインナップだけで済みます。
一から前提条件を考えるより、ずっと楽にアイデアを出せるのです。
そうしてアイデアの数が増えると、思いがけない組み合わせが生まれ、アイデアの質も上がっていく、と本書は説明しています。
カプセルトイは毎月300〜400ほどの新商品が出ていると言われ、最近はかなり個性的な商品も見かけます。
そういった商品を見かける度に、私はアイデアを思い付いた人に感心していました。
ですが、自由な発想で作られているように見えて、実は三つの制約の中から生まれていたのです。
感情を書き出すときは、範囲を絞る
本書は、制限を掛ける思考の習慣には、まとめやすくなるだけでなく、行動しやすくなるメリットもあると述べています。
例えば、家全体を掃除しようとすると、場所が多すぎてどこから手を付ければいいのかわからなくなります。
ですが、「今日は洗面所だけ」「次はトイレ」と場所を絞れば、手を付けやすくなります。
悩みを言語化する時も同じです。
原因になった出来事から今の感情までを、最初からいきなり全部書こうとしなくていいのです。
カプセルトイの三つの制約を、感情を書き出す場面に置き換えるなら、次のようになります。
- サイズ:書くのは、今いちばん引っかかっている出来事ひとつについての感情だけ
- 値段:使うのは紙1枚、時間は5分まで
- ラインナップ:「辛い」「悲しい」「悔しい」と、感情を表す言葉を思い付くだけ並べる
出来事の経緯や、なぜそう感じたのかは、まだ書かなくて大丈夫です。
冒頭のガチャガチャの思い出も、何が出て来たのかは忘れてしまったのに、ワクワクした気持ちだけは覚えていました。
出来事の細かいところより、そのとき感じた気持ちのほうが心に残っていることは少なくありません。
だから、まずは今あなたが抱えている感情に目を向けるところから始めてみましょう。
「書く」と「まとめる」を分ける
いざ感情を書き出そうとすると、殴り書きでいいのか、ある程度まとめてから書いた方がいいのか、迷うかも知れません。
「殴り書きだと同じ言葉ばかり並んで、意味がないんじゃないか」と思ってしまうからです。
私自身も、悩みを言語化する時に同じことで迷いました。
過去のつらい出来事を書き出した時は、まず感情を書き殴り、次に体に出ていた反応、最後に出来事の経緯と、順番に書き進めていきました(その時のことはこちらの記事に書いています)。
結論から言います。殴り書きでいいので、まずは書いてください。
同じ言葉しか書けなくても、全然問題ありません。
むしろ、最初はそれが普通です。
本書でも、いきなりまとめようとしないことの大切さを、次のように説明しています。
別の言い方をすれば、いきなりまとめないで「書く」と「まとめる」を分けて考えるのです。
(中略)
まずは言いたいことをまとめようと思わずに書く。
書き切ったら、文章を削っていきましょう。
書いて、減らして、まとめる。
(『読む・聞く、まとめる、言葉にする』より引用)
本書によれば、書きながらまとめるのはプロにとってもレベルの高い作業です。
プロでも難しいのなら、私たちが書きながらまとめられないのは当然です。
実際にこの記事を書いている私自身も、本書の言う通りだと感じています。
殴り書きでも、同じ言葉が続いても構いません。
今抱えている感情をすべて吐き出すことだけに意識を向けて、書き出せばいいんです。
自分しか見ないのですから、どんなに汚い言葉でもかまいません。
書き切ったら見返して、同じ言葉を減らしていきましょう。
最後まで残った言葉が、あなたの本心にいちばん近い言葉です。
書く時は書くことだけに、まとめる時はまとめることだけに。
ひとつひとつの過程に集中することが、言語化では大切です。
もし5分で「辛い」としか書けなかったとしても、大丈夫です。
感情に目を向けて書き始められたこと自体が、言葉にするための一歩だからです。
ここまで「まとめる、言葉にする」を中心に見てきましたが、本書ではその手前の「読む・聞く」の方法も詳しく紹介されています。
言語化する力だけでなく、本を読む力、話を聞く力、情報を整理して言葉にするスキルをまとめて身に付けられる本書を、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
こちらの書籍はAudibleでもご利用いただけます。
現在、Audibleに新規登録される方は30日間無料で体験することができ、今回ご紹介した書籍も無料体験中に聴くことができます。
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こちらの記事は「悩みを言語化する」に分類される記事です。
「悩みを言語化する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(悩みを言語化する)をご覧ください。


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