「メンタルが強い」「弱い」という物差し
「メンタルを強くする」
そんな言葉を一度は聞いたことがあるかと思います。
Googleの検索フォームに「メンタル」と打ってスペースを入れると、検索候補に「メンタル 強くする」や「メンタル 弱い」といった言葉が上位に並びます。
ここから見て取れるように、メンタルには「強弱」があるという認識が世間には浸透しているようです。
世の中には「メンタルが強い人」と「メンタルが弱い人」がいて、強い人は困難があっても打ち勝つことが出来る、生きやすい人達である。
一般的にはそんな認識ではないでしょうか。
当たり前ですが、メンタルは目に見えません。
だからこそ、目に見えるものに例えて説明するしかなく、その中で最も広く使われているのが「強弱」という比喩です。
私自身、長いことこの物差しで自分を測っていました。
そして測るたびに、少し苦しくなっていました。
「強弱」で測ろうとすると、比べる相手がどうしても必要になるからです。
そして比べた結果、自分のほうが弱いと判定してしまう。
もし「強弱」の概念がしっくり来ないなら、別の概念に乗り換えてみるという手があります。
今回ご紹介する『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』は、目に見えないメンタルの世界を「強弱」とは違う概念で解説した本です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
こちらの書籍はAudibleでもご利用いただけます。
現在、Audibleに新規登録される方は30日間無料で体験することができ、今回ご紹介した書籍も無料体験中に聴くことができます。
こちらのボタンからAudibleの公式ページに移動できますので、Audibleに興味を持たれた方は、この機会にぜひご利用ください。
メンタルを「容量」という概念で捉える
タイトルの通り、この本が使っているメンタルの概念は「容量」です。
本書はその考え方を、ジャム瓶に例えるところから始めます。
私達はみんな心のジャム瓶を持っていて、その中にはストレスに対する弱さのイチゴ、ストレスの原因のラズベリーが詰まっています。
ストレスに対して弱ければ弱いほどイチゴの量は増え、ストレスの原因が多いとラズベリーの量が増えます。
(『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』より引用)
このジャム瓶の比喩は、もともとストレスに対する遺伝的な弱さを説明するために、教授であり遺伝カウンセラーでもあるジェアリー・オースティンが提唱したものです。
著者はそこに、弱さには生物学的なもの、社会的なもの、認知的なもの、環境的なもの、そしてこれまでの人生経験によるものなど、様々な種類があるという見方を重ねています。
瓶の大きさは人それぞれで、詰まっているものの量もその時々で変わる。
そして中身が瓶の容量を超えてあふれたとき、心の健康に支障が出ます。
ここまでなら「強弱」と大きくは変わらないように思えるかもしれません。
決定的に違うのは、この瓶が大きくなるという点です。
周りの人に助けてもらう、良質な睡眠を取る、運動する。
そうした適切な対処法を学んで実践することで、ジャム瓶そのものの容量、つまり心の容量は増やすことが出来ると著者は述べています。
この捉え方には、いくつも良いところがあります。
心のケアと無縁の人はいないとわかること。
置かれた状況次第で、誰でも心を病む可能性があるとわかること。
遺伝的な要素だけでなく個人の背景や体験も考慮するので、ストレスへの弱さに個人差があることも説明できること。
そして何より、この概念には出口があります。
そしてなにより、希望があります。
ストレスの原因を可能であれば管理し、適切な対処を取ることでストレスに対する適応力を高められるのですから。
(『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』より引用)
「弱い」と判定されたらそこで終わりになってしまう「強弱」の概念と、ここが一番大きく違うところだと私は感じました。
本書が渡してくれるのは「自分専用の道具箱」
著者のエマ・ヘップバーンさんは、神経心理学を専門とする臨床心理士です。
15年以上の実務経験があり、その経験をもとに、読者が自分専用のメンタルを整える道具箱を作れるよう、様々な考え方とエクササイズを紹介しています。
エクササイズとは、本書に付属する資料に実際に書き込みながら理解を深めていく作業のことです。
一例を挙げると、図に描かれた波に浮かぶブイの中へ、自分をケアする小さな習慣を書き込むというものがあります。
困難な出来事に直面したとき、気持ちが沈みすぎないように支えてくれるのが、日頃から続けている小さな習慣です。
その習慣を、荒波の中でも決して沈まないブイとして絵にしておく。
言葉で「小さな習慣が大切です」と言われるより、自分のブイが浮かんでいる絵を思い浮かべられるほうが、はるかに頭に残ります。
こうして書き込む作業を通して、目に見えないはずのメンタルを整える道具が、扱えるものとして手元に残るのです。
そしてこの道具は、随時入れ替えて構わないと著者は明言しています。
使っているうちに錆びて更新が必要になることもあれば、人生の新しい局面を迎えて一式を入れ替えないといけないこともある。
つまり、概念を一度身に付けて終わりではなく、定期的な手入れが要るということです。
ではそもそも、メンタルを比喩で可視化することには、どんな意味があるのでしょうか。
可視化すると、ネガティブな感情と距離が取れる
メンタルを容量に例えると、「自分の器はどのくらいの大きさなのか」「その中に今、何がどれくらい入っているのか」と想像を膨らませることが出来ます。
すると「今の自分はどんな状態なのか」「これからどうすればいいのか」と考えが先に進み、自分自身を少し離れたところから眺める視点が生まれます。
この俯瞰の視点が生まれると、「辛い」「しんどい」といったネガティブな感情との間に距離が取れます。
苦しい感情は放っておくと自然と距離が近づき、やがて自分自身と同化してしまいます。
そして同化すればするほど、その感情はさらに強くなる。
だからこそ、一定の距離を取って離れておいたほうがいいのです。
例えば、仕事で大きな失敗をして上司から叱責を受け、辛い気持ちになったとしましょう。
帰宅してからもそのことばかり考えて、自分を責めたり、他人のせいにしたり、必死に言い訳を組み立てたりしてしまう。
私も、同じ状況で平気そうにしている同僚を横目に見ては、自分だけが弱いのだと思い込んでいました。
これはネガティブな感情が大きくなりすぎて、思考のほうが引きずられている状態です。
頭の中で何度もその場面を再生するほど感情は強くなるので、悪循環に陥ります。
この悪循環から抜けるには、まず感情を小さくする必要があります。
そして感情を小さくする方法が、先ほどの「距離を置く」です。
「容量」の概念を使って自分の心理状態を分析し、状況を俯瞰して見ることが出来るところまで離れる。
そうすることで、ネガティブな感情との同化を防ぐことが出来ます。
「強弱」は他人に向き、「容量」は自分に向く
ここで、先ほどの場面を「強弱」の概念で捉え直してみてください。
帰宅してからも失敗で落ち込んでいる自分は、メンタルが弱い。
同僚は同じような失敗をしても、次の日には気持ちを切り替えているから、メンタルが強い。
だから自分も早く切り替えなければと焦る。
ところがその焦りが、失敗そのものへの意識をかえって強めてしまい、ますます自分を苦しめる。
お気づきでしょうか。
「強弱」の概念で考えている間、意識のベクトルはずっと同僚に向いていて、自分自身には一度も向いていません。
比べては落ち込み、落ち込んではまた比べる。
「強弱」という概念そのものが、この悪循環を生みやすい構造を持っているのです。
一方で「容量」の概念には、他人が登場しません。
自分の瓶に今どれだけ入っているかを見るだけなので、意識のベクトルは自然と自分に向きます。
同じ出来事を前にしても、どの概念で捉えるかによって、見えるものがここまで変わります。
自分に合う概念は、自分で選んでいい
ここまで「強弱」と「容量」の二つの概念を見てきましたが、どちらが向いているかは人それぞれです。
「強弱」の概念が自分の感性に合っていて、その捉え方で日々を充実して過ごしている方もたくさんいらっしゃいます。
あるいは、今回ご紹介したどちらでもない別の概念のほうがしっくりくる方もいるでしょう。
それでいいのです。
大事なのは、メンタルの捉え方は「強弱」だけではないと知っておくことだと思います。
他にも概念があると知っていれば、今の物差しで自分を測って苦しくなったとき、物差しのほうを取り替えるという選択肢が生まれます。
そうやって探しているうちに、おのずと自分に合った概念に出会えるはずです。
その選択肢をひとつ増やす機会として、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
こちらの書籍はAudibleでもご利用いただけます。
現在、Audibleに新規登録される方は30日間無料で体験することができ、今回ご紹介した書籍も無料体験中に聴くことができます。
こちらのボタンからAudibleの公式ページに移動できますので、Audibleに興味を持たれた方は、この機会にぜひご利用ください。
こちらの記事は「心理的な抑圧を緩和する」に分類される記事です。
「心理的な抑圧を緩和する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(心理的な抑圧を緩和する)をご覧ください。


コメント