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うつ病が治らないのは、「うつ病を治して欲しい」と思っているからです『うつの壁』

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目次

いつの間にか独り歩きしてしまっているあの言葉

「うつ病」と言う言葉がこれだけ広まったのは、いつからでしょうか。

今では多くの人達に認知されている言葉となりました。

ただ、認知はされているのですが、その言葉の意味を正しく理解されている方はまだ少ない印象があります。

ちょっと気分が落ち込んだだけで、すぐに「うつだ」と言う方がいることからも、この言葉が正しく使われていないことがわかります。

あなたはうつ病に関して、どのくらい正しい知識をお持ちでしょうか。

うつ病とは何か、そしてもし自分が「うつ病かもしれない」と思った時はどうすればいいのか。

そんな知っている様で知らないうつ病に関して、初歩の初歩からわかりやすく教えてくれる本が今回ご紹介する『うつの壁』です。

いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。

こちらの書籍はAudibleでもご利用頂けます。

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「うつ病を治して欲しい」と思っていては、なぜうつ病は治らないのか

本書の著者の和田秀樹さんは精神科医です。

精神科医として、これまで多くのうつ病の患者を診察してきた著者ですが、そんな著者はうつ病についてどの様に考えているのでしょうか。

本書の『◆はじめに』から、精神科医である著者がうつ病についてどう考えているのかを次の通り説明しています。

先日、作家の五木寛之さんと対談する機会を得ましたが、五木さんはかねて、「病気は治すものではなく治めるもの」という意味のことをおっしゃっています。

卓見だと思います。

とりわけ、本書のテーマであるうつ病は、医者の治療だけで治すことはできません。

患者自身が人生の一期間、腰を据えて取り組み、考え方や働き方、生き方を見直さなければ、この病気を治めることはできないのです。

そもそもうつ病は、脳のハード面とソフトウェア面、双方の故障に起因する病気です。

ハード面では脳内の神経転達物質の減少が主因となり、ソフトウェア面では脳の使い方、つまりは考え方の偏りや変調が原因になります。

今は抗うつ薬の開発が進んでいるので、医師が早期に適切な治療をすれば、ハード面の故障は高確率で一旦は治すことが可能です。

ところが、うつ病は再発しやすい病気であり、ソフト面、考え方や物の見方を変えなければ、かなりの確率で再発します。

つまりうつ病は、ハードとソフトの両面から治療、療養しなければ、治めることが出来ない病気です。

(『うつの壁』より引用)

「うつ病は、医者の治療だけで治すことはできません」

冒頭から、かなり衝撃的な考え方だと思われたかもしれません。

その後の文章に、「患者自身が人生の一期間、腰を据えて取り組み、考え方や働き方、生き方を見直さなければ、この病気を治めることはできないのです」と書かれている通り、患者が自発的に治めようとしなければ、治らない病気だと断言しています。

「病院に行けば、お医者様が全て何とかしてくれる」という他人任せではなくて、自分自身が「うつ病を治す」という意志を持たなければ、うつ病は治りません。

さらに著者は、「うつ病は、脳のハード面とソフトウェア面、双方の故障に起因する病気です」と述べています。

「ハード」と「ソフトウェア」という言葉を説明するには、スマートフォンを例に挙げるのがわかりやすいでしょう。

このサイトでは、スマートフォンを使用して記事を読まれている方が多いので、今まさにスマートフォンでこの記事を読まれている方はスマートフォンに意識を向けてみてください。

あなたが手にしているスマートフォン。

当然ですが、形のある物体ですよね。

その物体こそが「ハード」という言葉の意味です。

スマートフォンを起動させる為に指を押してタップすると、スマートフォンが起動しました。

この「指を押した」ということを内部で命令を受け取るのが、「ソフトウェア」です。

著者は「脳のハード面とソフトウェア面」という表現をされているのですから、脳のハード面とは神経伝達物質など実際に脳内にあるものを指し、脳のソフトウェア面とは考え方など目には見えないものを指し示しています。

医療が施せるのは主にハード面であり、ソフト面は自分自身の考え方や物の見方を変えなければなりません。

つまり、医者にはハード面とソフト面の両方を治すことは出来ず、自分自身が変わらなければうつ病は完治できないということです。

あなたの言いたいことはわかります。

考え方や物の見方をそう簡単には変えられないから、苦しんでいるんですよね。

ただでさえ心が弱っている自覚があるのに、その解決方法が「自分を変えられるようになる」では対極にあるように感じます。

それなら、まずは未来に目を向けてみてはいかがでしょうか。

あなたは未来を悲観的に捉えてはいませんか?

気持ちが落ち込んでいるのなら、未来を悲観的に捉えてしまうのは当然だと言えるでしょう。

その気持ちもよくわかります。

ですが、考え方を変える最初の一歩として、その認識を変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

うつ病になった方がその後どうなっていくのか、著者はうつ病の患者のその後について以下の通り述べています。

というように、この病気の治療は一筋縄ではいかないのですが、ここで一つ明るい話をしておくと、この病の壁を乗り越えた先には大きな報酬が待っていることがあります。

それはより楽に生きられることです。

実際、私は過去におよそ1000人のうつ病患者さんを診てきましたが、「この病気を患ったことで人生観が変わり、楽に生きられるようになりました」という人が少なくありません。

その意味で私は、うつ病は新しい人生への扉にもなる病気だと考えています。

おおむね、転機はピンチの顔をしてやってきます。

うつ病になるという人生のピンチは、自らの生き方を変えるきっかけを掴むチャンスでもあるのです。

無論、そのドアノブにはうつ病の発症以前にも手をかけることができます。

現在、気分が晴れない人、不安やプレッシャーを感じることが多い人、イライラしがちな人たちも考え方を変えることでずっと楽に生きられるようになるはずです。

そこで本書では、うつ病の症状、原因、治療法に加え、うつの大きな要因であるストレスを軽くする考え方や暮らし方についてお話ししていきます。

私は心の強さの最も大きな条件は、メンタルに関する科学的知識を持っていることだと思います。

そして心のSOSに臨機応変に対応できることが、その病気を予防し、早期発見し、再発を防ぐことにつながると考えています。

(『うつの壁』より引用)

著者は精神科医として1000人以上のうつ病の患者さんを診てきましたが、その患者さんから出て来る言葉が「この病気を患ったことで人生観が変わり、楽に生きられるようになりました」という言葉でした。

「少なくない」と語られているのですから、そう思われている方が一定数いるのが読み取れます。

生きていると楽しいことばかりではなく、辛いことや苦しいこともたくさんあります。

特にこのサイトに訪れて、今この記事を読まれているあなたには心当たりがあることでしょう。

しかし、その「辛いことや苦しいこと」に焦点が当たり過ぎると、「自分がどうしたいのか」が霞んで見えなくなってしまいます。

うつ病はそんな「自分が本当はどうしたいのか」、「どんな人生を生きたいのか」といった自分自身に光を当てられる病だという見方も出来ます。

これこそ正に、考え方や物の見方を変えることです。

物事をひとつの側面から見るのではなく、違う視点からも見てみる。

これはうつ病だけではなく、ありとあらゆる分野で応用が効く素晴らしい考え方、物の見方だと私は思います。

そんな風に考えられるのなら、かつてうつ病になった患者が「楽に生きられるようになりました」という言葉が出て来るのも理解出来ます。

しかし、私達はうつ病に関してまだまだ知らないことばかりです。

違った側面から見てみるためには、視野を広げなければなりません。

そして視野を広げるためには、うつ病に関してより詳しく知る必要があります。

本書の第1章の『自死につながる、くり返す病』の『◆うつ病に関して、まずお話ししたい3つのこと』から、うつ病について著者が最も重要だと思っていることを次の通り説明しています。

精神科医が思う、うつ病で最も重要な3つのこと

まずはうつ病に関して、最も重要と思う3つのことについてお話しします。

その第1は、「はじめに」でも述べたように、うつ病は精神疾患の中では一旦は治りやすい病気だということです。

おおむね、60%の人は薬物治療によって、比較的早期に快方に向かいます。

早期治療の場合は時間をより長くかけ、他の療法を加えれば9割の人が寛解、症状がなくなることに至ります。

「うつ病は難しい病気」という印象を持っている人も多いと思います。

実際、かつてのうつ病は非常に厄介な病気でした。

とりわけ、1950年代までは事実上、よく休むくらいしか療法がなかったため、一旦この病気を発症すると長期間苦しむ人が少なくなかったのです。

うつ病に苦しんだ偉人、有名人を挙げると、リンカーン、エドガー・アラン・ポー、ヘミングウェイ、ヴォルト・ディズニー、アガサ・クリスティー、ビビアン・リー、オードリー・ヘップバーン、木戸孝允、有島武郎、太宰治ら枚挙にいとまがありません。

その内数名は自ら命を絶っています。

そういう状況が変わり始めたのは1960年前後、薬物療法、精神療法の両面で画期的な治療法が生まれたからでした。

薬物治療の分野では、三環系抗うつ剤と呼ばれる新薬が生まれ、精神療法の分野では認知行動療法という新しい考え方に立つ治療法が編み出されたのです。

その後、1980年代末に入ると、SSRIというより使いやすい治療薬が生まれ、日本では90年代の末に認可。

うつ病はさらに治りやすくなりました。

現在では「初発、最初の発症、早期発見、治療、勝手に薬をやめない」という3条件が揃えば、9割は治る病気とまで言われています。

ただし、治りやすくなったとはいえ、この病気を侮ることはできません。

(『うつの壁』より引用)

「うつ病は治るのが難しい病気」という印象は確かにあります。

例えば、上記の引用でうつ病になった有名人を複数人挙げていますが、最近では有名人がうつ病であることを公表することも少なくないですし、ニュースやSNS等でうつ病で苦しんでいる方の闘病生活を目にすると、「うつ病は治るのが難しい病気」という認識があるのも当然でしょう。

しかし、「うつ病は条件を揃えられれば、9割は治る病気」と聞くと、安堵した気持ちになられたのではないでしょうか。

薬物治療が今も進化し続けていることと、世間のうつ病の認知が広まっていることもあり、早期に発見出来れば、治るのもその分早くなります。

ただ、「一旦は治りやすい病気」という言葉があるのが気になります。

なぜ、「一旦は」なのか、その理由について以下の通り答えています。

私が2つ目にお話ししたいのは、うつ病は非常に再発しやすい病気だということです。

初発から5年以内で40%、期間をより長く取れば60%の人は再発すると見ていいでしょう。

加えて厄介なことに、うつ病は再発を許すと、その後の再々発率がさらに高まっていくのです。

再発しやすい理由としては、それがこの病気の特質であるとともに、発症の原因となるストレスフルな環境や、ストレスを大きくする本人の考え方をなかなか変えられないことが挙げられます。

さらに残念なことに、この国では長期の休息期間を取りにくいことも加わります。

症状が一旦は弱まったものの、まだ再発リスクの高い時期に以前と同じように働き始め、再発という事態に至りやすいのです。

(『うつの壁』より引用)

なぜ、「一旦は治る」のかと言うと、うつ病は再発の可能性が高い病気だからです。

それに一度再発すると、また再発してしまう確率がさらに高くなる病気です。

先程、「うつ病は治るのが難しい病気」という印象があることを述べましたが、それはこの再発の高さからも来ています。

症状が一旦弱まっても、油断が出来ないのがうつ病の恐ろしいところです。

ですが、ここまでが2つ目の内容です。

最後に強調したいこととして、うつ病の次の特徴について警告しています。

そして、最後に強調したい点は、うつ病は自殺につながりやすい病気だということです。

自殺の過半数には、うつ病が関係していると見られています。

欧米では、自殺者の生前の状況から原因や動機を分析する心理的剖検が広く行われていますが、その検証作業によって、自殺の60から80%にうつ病が関係していることがわかっています。

我が国では、警視庁調べの数字はそれよりは低いものの、同庁発表の令和3年における自殺者状況でうつ病が自殺の原因の1位に挙げられていることは間違いありません。

というように、うつ病は自殺と密接に関係する死に至る病です。

私が本書を執筆する主たる動機も、ここにあります。

うつに苦しむ方を少なくするとともに、うつに命を奪われる方が一人でも少なくなることを願って、本書の筆を起こしました。

(『うつの壁』より引用)

「うつ病は自殺と密接に関係する死に至る病」というのは、あなたもなんとなく想像がついていたのではないでしょうか。

上記の引用の通り、うつ病が原因で自殺してしまう方は今も多くいます。

だからこそ、うつ病について私達は正しい知識をもっと知らなければなりません。

うつ病は命に関わる病だからです。

うつ病でよく誤解されがちなこととして、「うつ病は心の弱い人や気弱な人がなる病気」という認識があります。

もちろん、これは誤解であり、精神科医である著者もその認識を否定しています。

では、実際はどの様な人がうつ病になるのか、同じ章の『◆うつ病は「心」をどう痛めつけるのか?ー怠け病ではない』から次の通り見解を示しています。

うつ病になるのは心が弱いからでも、性格が気弱だからでもない

では、そうしたうつ病に対処するにはどうすればいいのか?

最も肝心なことは、早期に発見し、早期に治療することです。

ここでうつ病に関してよくある誤解を解いておくと、うつ病になるのは心が弱いからでも、性格が気弱だからでもありません。

うつ病はソフトウェア、考え方などを含めた脳の病気であり、条件が重なれば、どんな人でもなる可能性があります。

うつ病は日常と地続きになって、誰もが落ちうる落とし穴のような病気と言ってもいいでしょう。

そして後述するように、躁うつ病、相極性障害でない限り、ほぼ自然治癒はしません。

治療するには、医師や薬の助けを借りる必要があるのです。

とりわけ日本人の場合、真面目な人が多いこともあって、うつ病の治療が遅れ気味になる傾向があります。

また、「鬱などというのは怠け者の言い訳ではないのか」というひどい偏見が世にはびこってきたため、そうした圧力も鬱を悪化させる原因になってきました。

自分では「うつ病かもしれない」と感じても、「周囲から怠け病と見られたくない」と思い、受診をためらってきた人が多いのです。

では、どのような症状が出たとき、医者にかかればいいのか?

ここからは、うつ病の症状についてお話ししていきましょう。

(『うつの壁』より引用)

うつ病とはどんな人にもなる可能性がある病気です。

このことは本書でも再三述べられており、「メンタルが強い人」や「明るい人」だからうつ病にはならないということはありません。

上記の引用の通り、うつ病の症状が表れても「自分が怠けているだけだ」と日本人は判断してしまいがちですが、その判断は間違っている可能性があります。

では、うつ病になると、具体的にどの様な症状が表れるのでしょうか。

うつ病の症状について、文章は以下の通り続きます。

うつ病の症状は大きく、心理症状と身体症状に分けられます。

まず、代表的な心理症状は、憂鬱な気分と何をしても楽しくない状態です。

臨床的には、そうした症状が2週間以上続いているとき、うつ病と診断します。

ですから、仕事でトラブルがあったりして2、3日憂鬱な気分が続いても、その後週末に楽しく過ごして憂鬱な気分が消えるようなら、それは一時的なうつ状態であり、うつ病とは言えません。

楽しいはずのことをしても楽しくない、そもそも楽しいことをする気にもなれないのがうつ病なのです。

私はこれまで、うつ病の患者さんからその憂鬱な気分や状態に関して、様々な表現を聞いてきました。

「とにかく悲しいんです、死ぬほど辛いんです」

「寂しいんです、みんなが楽しんでいるとますます寂しく感じます」

「全てに興味が持てません」

というような言葉です。

うつ病になると、他にも様々な心理症状が生じます。

次にまとめたのは、そうした症状の代表的なものです。

うつ病の代表的な心理症状。

何をするのも億劫。

孤独だと感じる。

何をやっても楽しくない。

誰も私のことを分かってくれないと思う。

いいことがあっても気分が晴れない。

「あの人のせいで」と考えてしまう。

やる気が起きない。

気力が出ない。

将来のことが不安になる。

何をしても虚しい。

周りの音がやけに気になる。

小さなことでくよくよする。

季節感が感じられない。

過去のことを思い出して悩む。

「死んでしまいたい」と思う。

(『うつの壁』より引用)

上記の症状に、あなたは心当たりがないでしょうか。

もし心当たりがあるのなら、うつ病の可能性があります。

では、もし「うつ病かもしれない」と思ったら、何科にかかればいいのでしょうか。

心療内科や精神科、メンタルクリニックなど専門にしている病院はたくさんあります。

同じ章の『◆「うつっぽい」と思ったとき、「何科」にかかればいいのか?』から、どの科を受診すればいいのかについて次の通り説明しています。

「うつ病かもしれない」と思ったら、何科にかかればいいのか

というような負の循環を避けるため、早期に医者にかかることが必要なのですが、実際問題として「うつっぽい」と思ったとき何科にかかればいいのかよくわからないという方が多いと思います。

確かに心の病気系の病院・クリニックは精神科、神経科、神経内科、心療内科、メンタルクリニックなど、様々な看板を掲げているのでどの科を受診すればいいのか、迷われるのも無理のないことだと思います。

ここで心の病気系の病院・クリニックの違いについてまとめておきましょう。

まず、精神科と神経科はほぼ同じものです。

神経科は「脳神経を扱う科」というほどの意味で、精神疾患の治療に当たっている医療機関がこう名乗っています。

「精神科」よりも、「神経科」という名の方が患者さんが来院しやすいこともあって、この名を使う医療機関が少なくないのです。

また、神経科に一字足して、「神経内科」という看板を掲げている医療施設もあります。

この科は元々は脳や神経の障害を原因とする内科的な病気、例えばパーキンソン病などを治療する科でした。

ところが、名前が紛らわしいこともあって、精神科に通った方がいい患者さんも来院するようになり、今では多くの神経内科が心の病を抱えた患者も見るようになっています。

ただ、この科に関してはまず電話をかけて、精神疾患を専門的に見ているかどうかを確認した方がいいでしょう。

(『うつの壁』より引用)

うつ病を診てもらう時に、だいたい精神科か心療内科がよく候補に挙がりますが、神経科でも「うつ病かもしれない」と思ったときに診てもらえます。

また、違う科で診てもらった時にうつ病が発覚するケースもあります。

それがどの様な場合なのか、以下の通り文章は続きます。

心療内科も元は神経内科と同様、内科の一部門でした。

胃潰瘍や喘息などの病気は、症状的には内科の守備範囲ですが、原因は心にあるケース、いわゆる心身症であることが少なくありません。

心療内科は、そうした患者さんを診るために設けられたジャンルだったのです。

ところがこの科にも、次第にうつ病や神経症などの患者さんが通うようになり、今は心の病も診る心療内科が増えました。

というわけで、自分が「うつ病かもしれない」と感じた時は、精神科、神経科、心療内科のいずれの科を訪ねてもOKです。

一方、神経内科は前述したように、電話をしてから訪ねるといいでしょう。

また、最初から精神科などを受診することに抵抗を感じる人、あるいはホームドクターがいる人はまずは内科で診てもらえばいいと思います。

実際、うつ病の人が最初に受診した科は内科がおよそ65%で、婦人科がおよそ10%を占めています。

他の病気だと思って内科や婦人科を受診したところ、うつ病が発見されるというのはよくある話なのです。

そうして内科を受診し、内科医が「うつ病の疑いがある」と診断すれば、専門の診療機関を紹介してくれるはずです。

(『うつの壁』より引用)

違う科でもうつ病が発覚して、専用の診療機関を紹介して貰えますが、もしあなたが「うつ病かもしれない」と思われているなら、上記の引用の通り精神科、神経科、心療内科のいずれかの科を訪ねるのがいいでしょう。

実は、私も過去に「うつ病かもしれない」と思い、最初に受診したのが心療内科でした。

最初の一歩を踏み出す勇気が出なくて怖くなる気持ちは、私もよくわかります。

ですが、最初の一歩を踏み出せれば、次に踏み出す一歩はもっと軽くなります。

しかし、時間が経ってしまうと次の一歩を踏み出すのが重くなってしまうので、最初の一歩を踏み出したなら、その感覚を忘れないうちに行動すべきです。

それに「うつ病かもしれない」と思うのは、あなただけではありません。

私自身も「自分がうつ病かもしれない」と思って心療内科に行きましたし、「自分がうつ病かもしれない」と思う方は年々増加している傾向にあると本書でも述べています。

第2章の『ストレスをためにくい、頭の切りかえ方』から『◆うつの主原因「ストレス」を軽減する2つの方法』でその傾向に関して、以下の通り解説しています。

近年、うつ病の患者数がますます増えています。

私が精神科医になった35年前、うつ病と統合失調症の患者数はほぼ同数だったのですが、その後、後者の患者数が横ばいなのに対して、うつ病の患者数はおよそ3.5倍にも増えているのです。

WHO、世界保健機関によると、人口のおよそ5%がうつ病と推定されているので、その比率を我が国の人口に当てはめると、およそ600万人の人がこの病を患っていることになります。

そのため、近年患者数が増えているのも、昔よりうつ病が増えているからではなく、医者にかかる人が増えているというのが実情だと思います。

また生涯有病率、一生のどこかでその病気になる比率では、男性は6人に1人、女性は4人に1人なので、生涯のどこかでそのくらいの割合でこの病気にかかると推定されています。

このような状況の中、うつ病に関する基礎知識、そして予防法を知っておく重要性は非常に高いと思います。

(『うつの壁』より引用)

人口の5%と聞くと少ないように感じますが、600万人と聞くと印象は大きく変わります。

上記の引用の通り、うつ病自体は昔からありましたが、数が少なかったのは世間のうつ病の認識が少なかっただけです。

男性は6人に1人、女性は4人に1人の割合でうつ病になる確率があるのですから、「うつ病は誰でもなる病気」というのも説得力があります。

では、うつ病にはどの様に対処するべきなのか、文章は以下の通り続きます。

さて、うつ病は環境的にはストレスの多い状況に身を置くことで、脳のハード面、ソフトウェア面、双方のバランスが崩れ、発症する病気と言えます。

普通は気分が落ち込んでもしばらくすると回復するものですが、強いストレスが持続的にかかると落ち込みから回復できなくなり、うつ病を発症することになるのです。

「最近、ずっと気分が晴れないな」、「妙にイライラしているな」と感じたら、それはストレス由来の精神の不調かもしれません。

心身からの警告反応と受け止めて、早期に手を打つことです。

放っておくとうつ症状が現れ、やがてはうつ病に発展していきかねません。

では、どうすればストレスから心や体を守ることができるか。

それにはストレスを軽くするような考え方と暮らし方をすることが必要です。

(『うつの壁』より引用)

うつ病は早期に対処するのが大切です。

これまでに何度も言われていることですが、それだけ早期に対処するのが重要であることがわかります。

うつ病の原因となっているストレスそのものを消すのが、対処するには手っ取り早いのですが、それは難しいでしょう。

例えば、会社の上司のパワハラがストレスなら、会社を辞めればストレスそのものはなくなります。

ですが、会社そのものを辞めるのは生活に困りますし、次は生活が困窮することがストレスとなり、うつ病がより悪化してしまうかもしれません。

ですから、ストレスを無くそうとするのではなく、軽くする。

それにはストレスとの向き合い方を変えるべきです。

そのストレスとの向き合い方を変える方法こそが、考え方を変えることです。

考え方を変えることによってうつ病にどの様な効果があるのか、同じ章の『◆ストレスを感じるも感じないも、「考え方」しだい』から次の通り説明しています。

考え方を変えるだけで、うつ病の症状は好転する

では、考え方や物の見方がうつ病とどのように関係するか、お話ししていきましょう。

人がなぜうつ病になるのか。

その原因を巡って、今基本となっている考え方は「脳内の神経伝達物質の不足が原因」と見る仮説です。

私もそれが一因であることは間違いないと思いますが、過去の臨床経験からそれが全てでもないと見ています。

同物質の不足は謂わば、脳のハード面の故障ですが、それと共に物量には、脳のソフトウェア面の故障が大きく関係していると考えているのです。

具体的に言えば、脳のソフトウェアの故障とは、その人の偏った考え方や物の見方のことです。

私はそれらを改めない限り、うつ病の予防、根本的な治療、再発の防止は出来ないと見ています。

さらに言えば、今基本とされる原因説では、「神経伝達物質の不足によって、考え方や気分を正常に制御できなくなる」と考えますが、私はその逆も大いにあり得ると考えています。

つまり、悲観的すぎたり、頑固すぎたりするなど、考え方を正常にコントロールできないから、神経伝達物質が減ることもあり得ると推論しているのです。

実際、「この患者さん、考え方が変わったな」と思うと、その後病状が良くなるケースが少なくありません。

とりわけ軽症のうつ病の場合など、薬を使うまでもなく、考え方が変わるだけで症状が好転することが多いのです。

(『うつの壁』より引用)

考え方を変えるだけで、うつ病の症状が好転する。

精神科医である著者がそう断言しているのですから、うつ病において考え方がいかに大切であるかが上記の引用からよくわかります。

考え方に意識を向けた方がいいのは、ここまでの説明で理解出来ました。

しかし、考え方に意識を向けるといっても、何をどうすればいいのでしょうか。

それなら、簡単な質問からあなたの考え方を見直してみましょう。

例えば、あなたはこんな考え方をしてはいないでしょうか。

そもそも、ストレスを溜め込みやすいかどうかには、その人の考え方が大きく関係します。

例えば、次の2つの物の見方のうち、どちらがストレスを溜め込みやすいでしょうか?

A、もう半分しかない。

B、まだ半分もある。

あるいは、 A、残り1日しかない。

B、まだ丸一日も残っている。

無論、共にAの方がストレスを溜めやすく、Bの方が溜めにくいことは明らかでしょう。

Aのように物事をネガティブに捉えれば、焦りや不安が募るばかりですが、Bのようにポジティブに考えれば、ストレスは和らぎ、むしろやる気が湧いてくるはずです。

コロナ禍の影響にしても、「何かと仕事がやりにくくなった」とネガティブに捉えた人もいれば、「リモート勤務で職場の人間関係に悩まされることがなくなった」や「通勤時間を省けて能率が上がった」とポジティブに捉える人もいました。

もちろん、前者のように考える人は何かとストレスを溜めやすく、後者のように捉える人の方がメンタル面では健康でしょう。

(『うつの壁』より引用)

ある事象を見て、悲観的に捉えるのか、それとも楽観的に捉えるのか。

これだけでも自分がどちらの傾向で物事を捉えているのか、考え方がわかります。

もちろん、楽観的に捉えられた方がうつ病には良い効果があります。

そして、この悲観的な考え方を修正するのが、認知行動療法と呼ばれるものです。

あなたも認知行動療法という言葉をどこかで聞いたことがあるかもしれません。

その認知行動療法がどの様に誕生したのか、同じ章の『◆うつになりやすい「12の考え方」があります』から次の通り説明しています。

悲観的な考え方を改めるには

ストレスを溜めやすく、うつ病になりやすい人には共通した思考パターンがあります。

それを発見・提唱したのは、米国ペンシルバニア大学の精神科医アーロン・ T・ ベックとそのチームでした。

ベックは1963年にうつ病の認知療法を創案した研究者です。

それ以前のフロイトの流れを汲む精神医学では、「なぜ、うつになったか」という原因を突き止め、その原因を取り除くことで問題を解決しようとしていました。

しかし、そうした精神分析的な手法では、時間がかかる割に治療効果が上がっていませんでした。

そこでベックは、うつ病を治療するにはその原因を探るよりも、認知の歪み、主に物事を悲観的に捉えすぎる傾向を修正する方が近道になると考えました。

そして、物の見方を変える認知療法を創案。

その療法が効果を上げて、その後、認知行動療法に発展。

うつ病の精神療法のメインストリームとなったのです。

(『うつの壁』より引用)

うつ病の方は物事を悲観的に捉えすぎています。

人間ですから、悲観的になることはもちろんあるでしょう。

しかし、うつ病の方は悲観的になる時間が長ければ、悲観的な考え方もかなり偏っています。

その悲観的な考え方を是正する為に生まれたのが、認知行動療法です。

認知行動療法には様々な方法がありますが、私達にも簡単に出来て、その効果をすぐに実感しやすい方法を同じ章の『◆「いいことしか書かない日記」をつけてみましょう』から、以下の通り紹介されています。

うつ病治療などに使われるDTR、「非適応的な思考の記録」と呼ばれる治療法があります。

患者がカウンセラーの指導を受けながら、自分の感情や思考について書き出し、客観的に評価する手法です。

文字に書き起こすことによって、思考の歪みをはっきりさせ、思考パターンを変えていく手法といえます。

この方法は、カウンセラーの指導を受けないでも十分に使えます。

要するに、日記をつければいいのです。

文章に書き起こすと、自分の感情や思考、行動を客観的に見直すことができます。

例えば、今不安に思っていることを文章にすると、中身を可視化できます。

すると、それだけで不安感情が消えていくことがあるのです。

私がおすすめしたいのは、「いいことしか書かない日記」をつけることです。

日々の出来事の中から、不快な話や落ち込むような話は一切書かず、明るい話だけを綴るのです。

例えば、映画の感想を書くときでも、欠点を挙げつらうのではなく、面白かったところ、見てよかったと思うところだけを記します。

アメリカで次のような実験が行われたことがあります。

30人の被験者に毎晩寝る前に、その日にあった楽しかったこと、嬉しかったことを3つずつ書き出してもらったところ、1週間後、その人たちはうつ状態を表すスコアが下がり、自分を幸せと感じる幸福度のスコアが上昇したのです。

いいこと日記に書き出すのは、ほんの些細なことでOKです。

思い当たるような嬉しいことが何もなければ、「今日は一日よく晴れていて、気分が良かった」でもいいのです。

そうした前向きな言葉、あるいは思考は気分を明るくする材料になります。

いいことばかりを綴るうちに、うつうつとした気分が消えていくことが多いのです。

(『うつの壁』より引用)

実は、私もこの「いいことしか書かない日記」に挑戦したことがあります。

上記の引用では、いいことを書く数は3個ですが、私は毎日10個いいことを書くことに挑戦していました。

なぜ10個なのかと言うと、無理矢理にでもいいことを書くことに意味があるからです。

「朝起きられた」、「遅刻しなかった」、「ご飯がおいしかった」など、3個くらいならすぐに書けるのですが、10個となると6か7個目あたりで大抵の人は息切れします。

それでも無理矢理捻り出して、一日10個いいことしか書かない日記を私は一年以上毎日書き続けました。

すると、どうなったか。

「今日はいいことしか書かない日記に何を書こうか」と普段の生活から自然と考えるようになりました。

つまり、悲観的な考え方をしてしまうのがかなり弱まったのです。

いいことしか書かない日記を始める前の私は、絵に描いたように典型的なネガティブで悲観的な人間でした。

何か嫌なことがあると、「やっぱり」が口癖のような悲観的な考えをしていました。

「やっぱり」という言葉が出てしまうのは、自分が傷つかないように自分の中で予防線を張っているからです。

「予め嫌なことを想定しておけば、実際にその嫌なことが起きても心の準備が出来ているので自分が傷つかないから」という理由でいつも悲観的なことばかり考えて、予防線を張り続けていました。

ですが、予防線を張り続けていても何も楽しくないし、自分で先に嫌なことを勝手に想像して疑似体験しているようなものなので、今振り返ってみると行き過ぎた自傷行為だったと反省しています。

「自分が傷つかないために」と思って生まれた考え方でしたが、そういった考え方を続けていても傷つかないどころか、逆に自分自身で傷つけてしまっているだけでした。

そんな私の悲観的な考え方を改めてくれたのが、いいことしか書かない日記です。

いいことしか書かない日記を一年以上、毎日書き続けた経験者である私からのアドバイスですが、最初から完璧を目指さなくても大丈夫です。

「いいことしか書かない」だとすごい嬉しかったこと、例えば入手が難しいライブのチケットが当選したなど、かなりいいことを書こうと最初の内は意気込んでしまいがちです。

しかし、最初は本当に些細なこと、例えば先程挙げた「朝起きられた」、「遅刻しなかった」、「ご飯がおいしかった」くらいの少しでもいいことだったと思えるような出来事で十分です。

いいことを書く数は少なすぎると惰性で終わらせてしまい、あまりその効果を感じられないので、「ちょっと無理して書き出せば届きそうな数」に設定するのがお勧めです。

私の場合は10個でしたが、まずは10個で挑戦してみて、あなたなりの「ちょっと無理して書き出せば届きそうな数」に調整してみてください。

その日の出来事を振り返って、無理矢理にでも何とか思い出していいことを書こうとすることを続けていく内に、悲観的な考え方は徐々に改善されていきます。

考え方や物の見方を変えるのは大変なことです。

一日や二日ですぐには変えられません。

人の考え方や物の見方というのは、これまで生きてきた長い年月をかけて構築されてきたものです。

それをすぐに変えようとするのは至難の業ですし、長期戦になると覚悟した方がいいでしょう。

ですが、そんなに肩肘を張る必要もありません。

あまり張り切りすぎていても、息切れして、続けられなくなってしまうのがオチです。

毎日少しずつでもいいから行動に起こして、続けることが大切です。

本書では「いいことしか書かない日記」の他にも悲観的な考え方を改める方法を複数紹介しており、さらにより詳しくうつ病に関する正しい知識を精神科医である著者から学ぶことが出来ます。

あなたが悲観的な考え方を改めようとしているなら、そしてうつ病を自らの意思で治めようとする気概があるなら、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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