過去を振り返るたびに、自分を責めてしまう
「あの時、ああすればよかった」
過去を振り返ったとき、ついそんな言葉が漏れてしまうことはありませんか。
小さな失敗から大きな失敗まで、「今だったら違う行動を取るのに」と後悔することは、生きていればよくあることです。
悩みを言語化することは、自分自身の過去を振り返ることでもあります。
「あの時、ああすればよかった」くらいで終われればいいのですが、「どうしてあの時ああしてしまったんだろう」と、自分を責めるところまで行ってしまうことがあります。
辛かったり苦しかったりした過去であればあるほど、振り返ったときに自分を責めてしまいがちです。
ですが、そこまで自分を責める必要はありません。
そんなときに自分を守ってくれる考え方があります。
それが「リフレクション」です。
過去を振り返るときにリフレクションを行えば、自分を責めなくなるだけでなく、過去を前向きに受け止められるようになります。
そのリフレクションとは一体何なのか、どのように行えばいいのかを解説しているのが、今回ご紹介する『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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リーダーに足りないのは「自分自身と向き合うこと」
著者の熊平美香さんは、ハーバード大学経営大学院でMBAを取得したあと、金融機関向けの金庫設備などを手がける熊平製作所で取締役経営企画室長などを務めました。
その後、日本マクドナルドの創業者である藤田田さんに師事し、新規事業の立ち上げや人材教育に携わります。
独立後はリーダーシップや組織開発のコンサルティングを始め、現在は一般社団法人21世紀学び研究所の代表理事などを務めています。
この経歴からもわかる通り、本書はリーダーに向けて書かれたビジネス書です。
ビジネス書と聞くと難しそうな印象がありますが、リーダーという立場になじみのない私たちにも、一からわかりやすく丁寧に説明してくれます。
そして、本書で紹介されている内容は、悩みを言語化する過程でも必ず役に立ちます。
まずは、リーダーになるとどのような状況が待っているのかを見ていきましょう。
本書の「はじめに」によると、リーダーになると、他部署との連携や部下の育成など、次から次へと課題に追われるようになります。
さまざまな手法を試してもうまくいかず、課題を両手いっぱいに抱えたまま、環境に流されていく。
この様な状況において足りないのは、新しい知識でも、優秀なメンバーでもありません。
自分自身と向き合うことです。
課題を解決する為のツールは、コンピューターで例えるところのアプリケーションに過ぎません。
どれだけ最新のアプリケーションを試そうとしても、人間のOS、学ぶ力が古いままでは使いこなすことは難しいでしょう。
(『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より引用)
人間のOSをアップデートするために、著者は、自ら定めた目的に向かって学び続ける人材の育成に取り組んでいます。
その中で最も重視しているのが、リフレクションと対話、そしてその二つの質を高めるメタ認知です。
文章を読むと、「やっぱりリーダーって大変なんだな」と思いますよね。
学生時代にも生徒会長などリーダーという立場はありましたが、社会人になると、その大変さをより痛感します。
そんなリーダーが課題を解決する方法が「自分自身と向き合うこと」というのは、意外に感じました。
「仕事に向き合う」「仕事仲間に向き合う」など、他者に目を向けることで課題が解決されそうなイメージがあったからです。
「自分自身と向き合う」のが最も大事だというのは、私にとって盲点でした。
リフレクションは「反省」ではない
この「自分自身と向き合う」ことにおいて大切な考え方が、本書のタイトルにもなっている「リフレクション」です。
リフレクション(REFLECTION)は英語で、日本語に訳すと「反射」や「内省」を意味します。
本書のリフレクションは「内省」のほうで、次のように定義されています。
リフレクションとは自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為です。
内省という言葉が最も近いでしょう。
(『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より引用)
リフレクションは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスやプラトンの時代から見られる行為です。
20世紀の終わり頃からは「未来をつくる力」として人材開発の分野で世界中に広がり、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」でも重視されています。
本書では、リフレクションの基本として「自分を知る」「ビジョンを形成する」「経験から学ぶ」「多様な世界から学ぶ」「アンラーンする(学んだことを手放す)」の5つのメソッドを紹介しています。
ところで、「振り返り」や「内省」と聞くと、どこかネガティブなイメージを抱きませんか。
それは、「反省」のイメージに引っ張られているからかもしれません。
「反省」と「内省」は、文字も意味も似ていますが、違いははっきりしています。
- 反省:過去の自分の言動を振り返り、悪いところがなかったかを考えること
- 内省:悪いことが起きたかどうかに関係なく、自分の心の動きや状態を観察すること
どちらも自分と向き合う点は同じですが、目的が違います。反省は悪かったことを振り返るイメージが強いのに対して、内省は自分の内面を振り返るので、悪かったことだけを振り返るわけではありません。
本書でも「リフレクションと反省は違う」と断言しています。
リフレクションも反省も過去の経験を振り返る行為ですが、振り返る目的が違います。
(中略)
リフレクションの目的は、経験からの学びを未来に活かすことです。
リフレクションの前提には、成功しても失敗してもいずれにしても経験したからこそ知っていることがある、経験を知恵に変えることが出来る、という信念があります。
(中略)
ですから、失敗をポジティブな気持ちで振り返る力が欠かせません。
(『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より引用)
反省は、変えられない過去の間違いを悔やみ、重たい気持ちになる振り返りです。
一方でリフレクションは、成功も失敗も「経験したからこそ知っていること」として、未来に活かすための振り返りです。
失敗したときに「自分にはできない」と思い込むのか、「これからできるようになる」と可能性に目を向けるのかで、経験から得られる学びの質が変わると本書は述べています。
気持ちを先に整えてから、過去を振り返る
とはいえ、失敗をポジティブな気持ちで振り返ることができる人は、そう多くないでしょう。
私たちは、過去を振り返ると感情があとからついてくるものだと考えています。
嬉しかった過去を振り返ればポジティブな気持ちになり、辛かった過去を振り返れば苦しい気持ちになる。
経験が先で、感情はあと。
ですが、私はこの順番こそ見直す必要があると考えています。
先にポジティブな気持ちを作っておいてから、過去を振り返るのです。
これは、ただ順番を逆にしただけではありません。
暗い部屋で探し物をする場面にたとえてみます。
暗い部屋を照らすなら、スマートフォンのライトが手軽です。
ですが、スマートフォンのライトは、光を向けた一部分だけをスポットライトのように照らし、周りまでは明るくしてくれません。
そこで、中身の入ったペットボトルの底からスマートフォンの光を当ててみます。
すると、光がボトルの中で広がって、ランタンのように周囲を照らしてくれます。
中身がスポーツ飲料のように少し濁った飲み物だと、光はより広がります。
停電したときにも使える方法なので、覚えておくと便利です。
少し工夫するだけで、光の広がり方は簡単に変わります。
人の考え方も同じです。
ずっと同じところにだけ光を当てていては、状況は何も変わりません。
逆に言えば、少しの工夫で光の広がり方が変わったように、人の考え方も少しの変化で変えることができます。
その光の広がり方を変えるのが、リフレクションです。
悩みの原因になった過去の出来事を振り返るとき、私たちは「傷ついた」「失敗した」など、自分を否定する言葉ばかりを投げかけてしまいがちです。
そんな言葉を持ち込んだままでは、悩みを言語化しようとしても億劫になるのは当然です。
そこで、過去を振り返る前に「経験は知恵に変えることができる」と意識しておく。
そうすれば、前向きな気持ちで過去を振り返れます。
いきなりポジティブな気持ちになるのは、もちろん難しいと思います。
ですが、「あの経験で学べたことは?」「次に同じ失敗をしないためにはどうすればいい?」と考えながら振り返れただけで、あなたの中の光の広がり方はもう十分に変わっています。
光の広がり方を変えた状態で振り返ると、記憶の中で何度も傷ついてきた箇所ばかりに意識が向かなくなります。
リフレクションを行う前よりも、辛い気持ちになることは少なくなるでしょう。
認知の4点セットで、光を当てる場所を選ぶ
ここまで、リフレクションとは何か、そしてその効果について見てきました。
では、リフレクションの質を高めるには何が必要なのでしょうか。
本書は、ただやみくもに取り組んでも、理想を実現するための知恵は身に付かないと注意しています。
リフレクションを実践する前に、まずは全てのベースとなる認知の枠組みを整理するフレームワーク、認知の4点セットを押さえましょう。
このフレームワークの目的はメタ認知、認知していることを認知する力を高めることです。
(『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より引用)
認知とは、外界にある対象を知覚し、それが何なのかを判断することです。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、誰もが呼吸と同じくらい当たり前に行っています。
本書では、次のような例が挙げられています。
- 朝の空を眺めて(知覚)、今日は晴天だ(判断)
- 上司の表情を見て(知覚)、今日は機嫌が良さそうだ(判断)
- 資料に目を通し(知覚)、価値のある箇所にアンダーラインを引く(判断)
経験を振り返るときに、何を振り返り、その経験をどう意味付けるのかも、この認知が決めています。
認知がそもそもずれていたら、どれだけリフレクションに時間を費やしても、本当に大切な学びは手に入りません。
先ほど、著者が最も重視しているのは「リフレクションと対話、そしてその二つの質を高めるメタ認知」だと紹介しました。
メタ認知がなぜリフレクションの質を左右するのか、その理由がここにあります。
ただ、私たちは認知を無意識に行っているので、そこに注目しようとしても、つかみどころがないと感じるでしょう。
そこで役立つのが、自分の判断を「意見」「経験」「感情」「価値観」の4つに切り分けて可視化する、認知の4点セットです。
リフレクションの難しさは、自己の認知に依存するところにあります。
人間は「自分の見たい物を見たいようにしか見ない」と言われます。
(『リフレクション (REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』より引用)
自分が何を知覚し、どう判断したのか(意見)。その背景にはどんな経験や感情、価値観があるのか。
そこまで見て初めて、自分のリフレクションを俯瞰できるようになると本書は述べています。
先ほどの、暗い部屋で探し物をする話を思い出してください。
光は照らしたところしか明るくならないように、認知も、自分が見たいところしか見えないようになっています。
光も認知も、どこに焦点を当てるかがとても大切です。
本当は光の当たっていない暗がりに探し物があるかもしれないのに、違うところを照らし続けていては見つかりません。
「探し物はこっちにあるんじゃないか」と、焦点を変えることに気付かせてくれる。
その感性を磨くのが、認知の4点セットです。
認知でどこに焦点を当てるかを見定め、リフレクションで明るく照らす。
そうすれば、悩みを言語化するときの辛さや苦しさが和らぐだけでなく、そこから新しい気付きを得て、言葉にできるようにもなるでしょう。
あなたの悩みの原因となった過去の出来事を、違った角度から明るく照らすために、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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こちらの記事は「悩みを言語化する」に分類される記事です。
「悩みを言語化する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(悩みを言語化する)をご覧ください。


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