多くの人達から愛されるレジェンド通販番組
テレビショッピングをご覧になったことはあるでしょうか。
最近ではYouTubeを始めとした動画配信サイトを中心に見ている方が多く、テレビをあまり見ない方もいらっしゃるかもしれません。
動画配信サイトが誕生するまでは、テレビで紹介されている商品を電話で契約して購入するのはとても一般的なことでした。
YouTubeに例えるなら、YouTuberの方が企業からオファーを受けて商品の魅力を説明している動画の走りだと思っていただけるとわかりやすいでしょうか。
もちろん、今でもテレビショッピングはいくつもの番組があり現役です。
地上波では平日のお昼と深夜に放送されています。
このテレビショッピングでとても有名な番組があります。
その番組は「ジャパネットたかた」です。
ジャパネットたかたの2023年の売上高は2630億円で、通販番組は数ある事業の内のひとつですが、この数字からも多くの視聴者が購入しているのがよくわかります。
そんな大人気通販番組のジャパネットたかたは、お客様に商品の魅力を伝える時に大切にしていることがあります。
そして、それは商品を売ることだけではなく、人とのコミュニケーションにおいても大切なのだそうです。
その大切なことを書籍にまとめたのが、今回ご紹介する『伝えることから始めよう』です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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著者の高田明さんはジャパネットたかたの創業者です。
著者は37歳の時に独立して今の事業を始めて、4年後にラジオショッピングを手掛け、そこからさらに4年後にテレビショッピングに着手します。
ラジオショッピングは26年、テレビショッピングは22年間、数えたことはありませんがテレビには数万回出演したと本書で述べています。
そして、2016年1月15日の生放送の番組を最後にテレビショッピングから引退しました。
著者は元々、大きな会社に成長させたいとか、日本一の通販会社にしたいという思いは全くなく、その日しなければならないことに300%の力を注ぎ込んで走り続けてきました。
「その日その時をただ、今を生きてきた。それだけだったんです。」と語っています。
老若男女問わず、多くのお客様に長年愛されて商品が売れ続けるジャパネットたかた。
その秘訣は一体何なのでしょうか。
著者は次の通り答えています。
「なぜジャパネットたかたではこんなに商品が売れるんですか?」
こんな質問を何度もいただきました。
そんなことを聞かれても、どうお答えすればいいのかよくわかりませんでした。
私はただ、自分が素晴らしいと思った商品を「どうすれば売れるかな」、「お買い上げ頂くには商品の魅力をどんな風に紹介すればいいのかな」とそればかり考えてはあれこれ試し、誠心誠意、一生懸命に紹介していただけでした。
何度も同じ質問を受けている内にひとつ気が付いたんですよ。
それは私達が商品の本当の魅力をお客様に伝えることだけでなく、その魅力が伝わることを本気で考えていた、ということでした。
それがジャパネットたかたのショッピングが、皆さんに受け入れられた理由だったのかも知れないと思ったのです。
どんなに素晴らしい商品でも、お店に並んでいるだけでは商品の魅力はお客様には伝わらないと思います。
それでは買ってはいただけませんよね。
もちろん、小売業の方々は誰でも商品の魅力を一生懸命に伝えようと努力されています。
しかし皆さん、ここが大切なところですよ。
「伝える」と「伝わる」は違うんです。
お客様に伝わるべきことがしっかり伝わっていなければ、お客様の心は動かないと思います。
伝えたつもりで終わってしまったら、商品を買っていただくことは出来ない。
それがラジオ、テレビショッピングを通して私が一番学んだことでした。
著者はコミュニケーションにおいて最も大切なことは「伝わる」ことだと考えています。
繰り返すことは大事なことだからと説明した上で、この話は本書で何度も出て来ます。
そして、「伝える」と「伝わる」は全然違うと断言し、次の様に続きます。
伝えたいことが相手に伝わっているかどうか、その原点に立ち返らないとコミュニケーションはうまくいきません。
自分は伝えたつもりでも、相手には伝わっていないことはよくありますよね。
それは夫婦の間であっても、親子でも、会社の人間関係や政治の世界でも同じだと思います。
自分の気持ちが伝わっていなければいい関係は築けません。
伝えたつもりではダメなんです。
「伝える」は自分が主語ですが、「伝わる」は相手が主語です。
相手の立場になって、言葉を考えてから話す。
当たり前のことですが、人と話す時に「伝える」に意識が向きがちでそのことをつい忘れてしまいます。
わかりやすい例として、口喧嘩しているカップルを想像してみてください。
こんな時に相手の女性がよく言うセリフで「どうしてわかってくれないの!?」と叫んでいるシーンが思い浮かびますよね。
この言葉も主語が自分です。
そして、「伝える」には「自分が伝えたいことを相手にどこか察して欲しい」という願望も込められている気がします。
「伝えた」のに相手が理解していないのは、相手が自分の言いたいことの意図を汲み取ってくれるのを期待をしながら、相手の視点から配慮する説明を怠ったからではないしょうか。
そもそも、相手はあなたの言葉を受け入れる状態ではないにも関わらず、あなたが「伝えている」可能性もあります。
そこを「伝わる」で考えてみると、準備しなければならないことの多さに気付きます。
その準備が出来ているかどうかが、「伝える」と「伝わる」の分かれ道だと考えています。
世阿弥(ぜあみ)をご存知ですか?
世阿弥とは、室町初期の能楽の創始者であり、父の観阿弥と共に能楽を大成した人物です。
この世阿弥に関して書かれた本を著者は社員から勧められ読んだところ、感銘を受け何度も赤線を引きながら読み込んでいると語っています。
書籍の中で著者の胸に刺さった言葉をいくつか紹介しているのですが、その中にも「伝える」と「伝わる」に関して書かれている部分があります。
「我見」、「離見」、「離見の見」
相手の立場に立って考えなければ、伝わるコミュニケーションにならないというお話をしました。
世阿弥もそのことについて説いています。
世阿弥は能を舞う時には三つの視点があると説きます。
「我見」と「離見」、そして「離見の見」の三つです。
「我見」とは、自分の側から相手を見る視点です。
舞台にいる演者、私が、見所、客席あるいは観客を見ているのが我見です。
一方の「離見」とは、相手が私を見る視点です。
観客が演者を見ているのが離見ですね。
そして、「離見の見」とは自分自身の姿を離れた場所から客観的に眺めた視点のことを言います。
つまり、舞台にいる演者があたかも幽体離脱でもするように、視点を見所後方に移動させて俯瞰するように舞台と客席の全体を見て、観客の視点で自分の舞を見るのが離見の見です。
舞う時には、観客の見と自分の見を一致させることが大切だと説いています。
簡単に言えば、独りよがりはいけないということでしょうか。
テレビショッピングに置き換えて私なりに解釈すると、売る側が商品の特徴や性能を説明して、「これいいでしょう」と一方的に進めているのが我見です。
それに対して、テレビを見ているお客様の生活シーンを想像して、「こんな風に使うといいと思いませんか?」と相手の立場で提案出来るのが離見。
そして、離見で気付いたことをどの様に伝えればお客様の心に届くか、伝え方の方法までを考えることが出来るのが離見の見ということになるのではないかと思います。
人間はつい我見に陥りがちですよね。
自分がいいと思ったら、相手がどう考えているかなんてお構いなしに押し付けがましく勧めてしまいます。
だからこそ、離見の意識を持たないといけないと思います。
見ている人、視聴者、お客様側の立場になって考えてみる。
そして、離見の見、相手が自分を見ている目線で自分を眺めてみる。
それが伝わるコミュニケーションには非常に大切だと思うんです。
(『伝えることから始めよう』より引用)
我見に陥ってしまいがちなケースは、先述した口喧嘩しているカップルの例でご理解して頂けたと思います。
そこで離見、「伝わる」を意識して相手の立場に立って考えることの大切さに気付くことが必要だと述べました。
そこから、さらに一歩進んで「離見の見」で相手が自分を見ている目線で自分を眺めることを意識してみましょう。
自分が発した言葉に相手はどう思うのか、相手の心境を予測することです。
相手が喜んでくれると思ってした行動なのに、相手の反応がいまいちだったことを経験したことはありませんか?
それは相手の心境を予測する精度が低いからです。
これは相手の立場に立ち、自分の行動に対して相手がどういう反応を示すのか予測を立てるのに失敗した典型的な例です。
ですが、そこから学べることはたくさんあるはずです。
「相手にお土産のクッキーを渡したけど、喜んでもらえなかったのは甘いものが苦手だったのかもしれない」など、そこからまた予測が出来ます。
そして、相手に理由を聞くことでその答え合わせが出来ます。
どんなに相手の立場に立って考えても、相手がどう思っているかは結局相手にしかわかりません。
そこで答えを貰うことで相手への理解に繋がるし、予測の精度も上がります。
本書の前半部分は著者の半生が描かれています。
その半生も大変興味深く、どの様にして今の価値観が形成されたのか、そして仕事を通して相手に伝わる技術をどの様にして確立していったのかを知ることが出来ます。
ここまで記事を読んでみて、伝えたいことを伝わるようにしたいと思われたのなら、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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