いつの間にか独り歩きしてしまっているあの言葉
「うつ病」という言葉がこれだけ広まったのは、いつからでしょうか。
今では多くの人に知られる言葉となりました。
ただ、言葉は知られていても、その意味を正しく理解している方はまだ少ない印象があります。
ちょっと気分が落ち込んだだけで、すぐに「うつだ」と口にする方がいることからも、この言葉が正しく使われていないことがわかります。
私自身、過去に「うつ病かもしれない」と思い、心療内科を受診したことがあります。
そのとき、うつ病について自分がほとんど何も知らないことに気づきました。
うつ病とは何か。そして、もし自分が「うつ病かもしれない」と思ったとき、どうすればいいのか。
知っているようで実はよく知らないうつ病について、初歩の初歩からわかりやすく教えてくれるのが、今回ご紹介する『うつの壁』です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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「うつ病を治して欲しい」と思っているだけでは、なぜ治らないのか
本書の著者の和田秀樹さんは、東京大学医学部を卒業した精神科医です。
これまでにおよそ1000人のうつ病患者を診てきた著者は、うつ病をどのように捉えているのでしょうか。
著者は本書の『◆はじめに』で、うつ病について次のように述べています。
とりわけ、本書のテーマであるうつ病は、医者の治療だけで治すことはできません。
患者自身が人生の一期間、腰を据えて取り組み、考え方や働き方、生き方を見直さなければ、この病気を治めることはできないのです。
(『うつの壁』より引用)
この直前で著者は、作家の五木寛之さんの「病気は治すものではなく治めるもの」という言葉を紹介し、「卓見だと思います」と述べています。
「うつ病は、医者の治療だけで治すことはできません」
冒頭から、かなり衝撃的な言葉だと感じたかもしれません。
著者は、患者自身が腰を据えて考え方や生き方を見直さなければ、この病気は治まらないと断言しています。
「病院に行けば、お医者さんが全部なんとかしてくれる」と任せきりにするのではなく、自分自身が「うつ病を治める」という意志を持つこと。
それがなければ、うつ病は治りません。
脳の「ハード」と「ソフトウェア」
さらに著者は、「うつ病は、脳のハード面とソフトウェア面、双方の故障に起因する病気です」と述べています。
「ハード」と「ソフトウェア」の違いは、スマートフォンにたとえるとわかりやすいでしょう。
今まさにスマートフォンでこの記事を読んでいる方は、手元の端末に意識を向けてみてください。
あなたが手にしているスマートフォンは、形のある物体です。
この物体そのものが「ハード」です。
画面を指でタップすると、アプリが開きます。
このとき、「タップされた」という信号を受け取り、何をするかを決めて命令を出しているのが「ソフトウェア」です。
目には見えませんが、確かに存在して、端末の動きを決めています。
脳に置き換えると、ハード面とは神経伝達物質など、実際に脳の中にあるものを指します。
ソフトウェア面とは、考え方や物の見方など、目には見えなくても存在するものを指します。
薬が主に働きかけるのは、ハード面です。
ソフトウェア面、つまり考え方や物の見方は、医師やカウンセラーの助けを借りることはできても、最後は自分自身で変えていくしかありません。
医者だけではハードとソフトの両方を治すことはできず、自分自身が変わろうとしなければ、うつ病は治りきらないということです。
うつ病を乗り越えた先にあるもの
とはいえ、考え方や物の見方は、そう簡単には変えられません。
そのことは、私も身をもって知っています。後ほど詳しくお話ししますが、以前の私は、何か嫌なことがあると「やっぱり」が口癖になっているような、典型的に悲観的な人間でした。
気持ちが落ち込んでいるときに、未来を悲観的に捉えてしまうのは当然のことです。
ですから、考え方を変える最初の一歩として、まずは「うつ病になった人のその後」を知ることから始めてみませんか。
著者は、うつ病の患者さんのその後について、次のように述べています。
ここで一つ明るい話をしておくと、この病の壁を乗り越えた先には大きな報酬が待っていることがあります。
それはより楽に生きられることです。
実際、私は過去におよそ1000人のうつ病患者さんを診てきましたが、「この病気を患ったことで人生観が変わり、楽に生きられるようになりました」という人が少なくありません。
(『うつの壁』より引用)
およそ1000人の患者さんを診てきた精神科医が、「楽に生きられるようになった」と語る人は「少なくない」と言っているのです。
生きていると、楽しいことばかりではなく、つらいことや苦しいこともたくさんあります。
今この記事を読んでいるあなたにも、心当たりがあるかもしれません。
しかし、その「つらいこと、苦しいこと」ばかりに焦点が当たると、「自分が本当はどうしたいのか」が霞んで見えなくなってしまいます。
うつ病は、「自分が本当はどうしたいのか」「どんな人生を生きたいのか」という、自分自身に光を当て直すきっかけになる病だという見方もできます。
これこそが、考え方や物の見方を変えるということです。
物事をひとつの側面からだけ見るのではなく、違う角度からも見てみる。
これはうつ病に限らず、あらゆる場面で応用が利く考え方だと私は思います。
そう考えられるようになれば、うつ病を経験した患者さんから「楽に生きられるようになりました」という言葉が出てくるのも理解できます。
ただ、違う角度から物事を見るには、視野を広げなければなりません。
そして視野を広げるには、まずうつ病についてもっと詳しく知る必要があります。
精神科医が思う、うつ病で最も重要な3つのこと
著者は第1章『自死につながる、くり返す病』の『◆うつ病に関して、まずお話ししたい3つのこと』で、うつ病について最も重要だと考えていることを3つ挙げています。
1つ目:うつ病は「一旦は」治りやすい病気
その第1は、「はじめに」でも述べたように、うつ病は精神疾患の中では一旦は治りやすい病気だということです。
おおむね、60%の人は薬物治療によって、比較的早期に快方に向かいます。
早期治療の場合は時間をより長くかけ、他の療法を加えれば9割の人が寛解、症状がなくなることに至ります。
(『うつの壁』より引用)
「うつ病は治りにくい病気」という印象を持っている方も多いと思います。
本書によると、実際にかつてのうつ病はとても厄介な病気でした。
1950年代までは、事実上よく休むくらいしか治療法がなかったため、一度発症すると長く苦しむ人が少なくなかったそうです。
本書では、リンカーンやヘミングウェイ、オードリー・ヘップバーン、太宰治など、うつ病に苦しんだ偉人や有名人が数多く挙げられています。
状況が変わり始めたのは、1960年前後のことです。
薬物療法では三環系抗うつ薬と呼ばれる新薬が生まれ、精神療法では認知療法という新しい考え方に立つ治療法が編み出されました。
さらに1980年代末には、SSRIというより使いやすい薬が登場し、日本でも1990年代の末に承認されて、うつ病はさらに治りやすくなりました。
現在では「初発、最初の発症、早期発見、治療、勝手に薬をやめない」という3条件が揃えば、9割は治る病気とまで言われています。
ただし、治りやすくなったとはいえ、この病気を侮ることはできません。
(『うつの壁』より引用)
最近では、有名人がうつ病を公表することも珍しくありません。
ニュースやSNSで、うつ病で苦しむ方の闘病生活を目にすることも増えました。
「うつ病は治りにくい病気」という印象を持つのも無理はないでしょう。
それだけに、「条件が揃えば9割は治る」と聞いて、少しほっとした方もいるのではないでしょうか。
薬物治療は今も進歩を続けており、うつ病という病気の認知も広がっています。
早く見つけることができれば、その分だけ回復も早くなります。
2つ目:うつ病は再発しやすい病気
ただ、「一旦は治りやすい」という言い方が気になった方もいるでしょう。
なぜ「一旦は」なのか。その理由が2つ目です。
私が2つ目にお話ししたいのは、うつ病は非常に再発しやすい病気だということです。
初発から5年以内で40%、期間をより長く取れば60%の人は再発すると見ていいでしょう。
加えて厄介なことに、うつ病は再発を許すと、その後の再々発率がさらに高まっていくのです。
(『うつの壁』より引用)
うつ病は、一度よくなっても再発しやすく、しかも再発するたびに、また再発する確率が高くなっていく病気です。
「うつ病は治りにくい」という印象は、この再発率の高さからも来ているのでしょう。
本書では、再発しやすい理由として、病気そのものの性質に加えて、発症の原因となったストレスの多い環境や、ストレスを大きくしてしまう本人の考え方をなかなか変えられないことを挙げています。
症状が一旦おさまっても油断できないのが、うつ病の怖いところです。
3つ目:うつ病は命に関わる病気
そして著者が最後に強調しているのが、次の点です。
そして、最後に強調したい点は、うつ病は自殺につながりやすい病気だということです。
自殺の過半数には、うつ病が関係していると見られています。
(『うつの壁』より引用)
本書によると、欧米で行われている「心理的剖検」(亡くなった方の生前の状況から原因や動機を分析する調査)では、自殺の60〜80%にうつ病が関係していることがわかっています。
うつ病は命に関わる病気です。
だからこそ、私たちは正しい知識を持っておく必要があります。
うつ病になるのは心が弱いからでも、性格が気弱だからでもない
うつ病についてよくある誤解に、「うつ病は心の弱い人や気弱な人がなる病気」というものがあります。
精神科医である著者も、この認識をはっきり否定しています。
同じ章の『◆うつ病は「心」をどう痛めつけるのか?ー怠け病ではない』の一節です。
ここでうつ病に関してよくある誤解を解いておくと、うつ病になるのは心が弱いからでも、性格が気弱だからでもありません。
うつ病はソフトウェア、考え方などを含めた脳の病気であり、条件が重なれば、どんな人でもなる可能性があります。
(『うつの壁』より引用)
うつ病は、どんな人でもなる可能性がある病気です。
本書でも繰り返し述べられているように、「メンタルが強いから」「明るい性格だから」うつ病にならない、ということはありません。
この節の見出しに「怠け病ではない」とある通り、うつの症状が出ても「自分が怠けているだけだ」と片づけてしまう方は少なくありませんが、その判断は間違っているかもしれません。
では、うつ病になると、具体的にどのような症状が表れるのでしょうか。
うつ病の症状は大きく、心理症状と身体症状に分けられます。まず、代表的な心理症状は、憂鬱な気分と何をしても楽しくない状態です。
臨床的には、そうした症状が2週間以上続いているとき、うつ病と診断します。
(『うつの壁』より引用)
憂鬱な気分が続いている、何をしても楽しくない。そんな状態が2週間以上続いているなら、うつ病の可能性があります。
「うつ病かもしれない」と思ったら、何科にかかればいいのか
では、「うつ病かもしれない」と思ったら、何科にかかればいいのでしょうか。
同じ章の『◆「うつっぽい」と思ったとき、「何科」にかかればいいのか?』で、著者はまず次のように述べています。
確かに心の病気系の病院・クリニックは精神科、神経科、神経内科、心療内科、メンタルクリニックなど、様々な看板を掲げているのでどの科を受診すればいいのか、迷われるのも無理のないことだと思います。
(『うつの壁』より引用)
そのうえで、著者の結論は次の通りです。
というわけで、自分が「うつ病かもしれない」と感じた時は、精神科、神経科、心療内科のいずれの科を訪ねてもOKです。
一方、神経内科は前述したように、電話をしてから訪ねるといいでしょう。
(『うつの壁』より引用)
神経内科(現在は「脳神経内科」と呼ばれることが多い科です)は、主に脳や神経の体の病気を診る科なので、うつ病を診ているかどうかは病院によって異なります。
受診する前に電話で確認しておくと安心です。
また、内科など別の科を受診したときに、うつ病が見つかるケースもあります。
その場合は専門の医療機関を紹介してもらえますが、自分で「うつ病かもしれない」と感じているなら、最初から精神科、神経科、心療内科のいずれかを訪ねるのがいいでしょう。
冒頭でもお話ししたように、私も過去に「うつ病かもしれない」と思い、最初に受診したのは心療内科でした。
最初の一歩を踏み出す勇気が出ず、怖くなる気持ちは、私にもよくわかります。
ですが、最初の一歩を踏み出せれば、次の一歩はもっと軽くなります。
反対に、時間が経つほど次の一歩は重くなっていきます。最初の一歩を踏み出したら、その感覚を忘れないうちに次の行動に移してください。
うつ病は、誰にとっても身近な病気
「うつ病かもしれない」と感じているのは、あなただけではありません。
本書によると、うつ病の患者数は年々増えています。第2章『ストレスをためにくい、頭の切りかえ方』の『◆うつの主原因「ストレス」を軽減する2つの方法』では、次のように解説されています。
近年、うつ病の患者数がますます増えています。
私が精神科医になった35年前、うつ病と統合失調症の患者数はほぼ同数だったのですが、その後、後者の患者数が横ばいなのに対して、うつ病の患者数はおよそ3.5倍にも増えているのです。
WHO、世界保健機関によると、人口のおよそ5%がうつ病と推定されているので、その比率を我が国の人口に当てはめると、およそ600万人の人がこの病を患っていることになります。
(『うつの壁』より引用)
「人口の5%」と聞くと少なく感じるかもしれませんが、20人に1人、日本全体で600万人と聞くと印象は大きく変わります。
うつ病そのものは昔からあった病気です。
患者数が増えた背景には、うつ病という病気が知られるようになり、受診する人が増えたことも大きいのではないかと私は思います。
では、うつ病はどのようにして起こるのでしょうか。著者は次のように説明しています。
さて、うつ病は環境的にはストレスの多い状況に身を置くことで、脳のハード面、ソフトウェア面、双方のバランスが崩れ、発症する病気と言えます。
普通は気分が落ち込んでもしばらくすると回復するものですが、強いストレスが持続的にかかると落ち込みから回復できなくなり、うつ病を発症することになるのです。
(『うつの壁』より引用)
うつ病の原因となっているストレスそのものをなくせれば、それが一番の近道です。
しかし、それは簡単ではありません。
たとえば、上司のパワハラがストレスなら、会社を辞めればストレスそのものはなくなります。
ですが、会社を辞めれば生活に困るかもしれません。今度はお金の不安が新たなストレスになり、うつ病がかえって悪化してしまうこともあるでしょう。
ですから、ストレスをなくそうとするのではなく、軽くする。
そのために、ストレスとの向き合い方を変える。その方法こそが、考え方を変えることなのです。
考え方ひとつで、ストレスの感じ方は変わる
では、考え方を変えると、ストレスとの向き合い方はどう変わるのでしょうか。
同じ章の『◆ストレスを感じるも感じないも、「考え方」しだい』には、簡単な問いが載っています。
あなたならどちらを選ぶか、考えてみてください。
そもそも、ストレスを溜め込みやすいかどうかには、その人の考え方が大きく関係します。
例えば、次の2つの物の見方のうち、どちらがストレスを溜め込みやすいでしょうか?
A、もう半分しかない。
B、まだ半分もある。
あるいは、A、残り1日しかない。
B、まだ丸一日も残っている。
(『うつの壁』より引用)
どちらも、Aのほうがストレスを溜めやすく、Bのほうが溜めにくい見方です。
Aのように物事を否定的に捉えれば焦りや不安が募るばかりですが、Bのように捉えればストレスは和らぎ、むしろやる気が湧いてきます。
同じ出来事を見ても、悲観的に捉えるのか、楽観的に捉えるのか。
この問いに答えるだけでも、自分がどちらの傾向で物事を見ているのかがわかります。
そして、悲観に偏りがちな見方を少しずつ整えていくことが、ストレスを軽くすることにつながります。
悲観的な考え方を改めるには
悲観的な考え方を、精神療法によって整えていく治療法が「認知行動療法」です。
言葉だけなら、どこかで聞いたことがあるかもしれません。
その原点について、同じ章の『◆うつになりやすい「12の考え方」があります』で、著者は次のように紹介しています。
ストレスを溜めやすく、うつ病になりやすい人には共通した思考パターンがあります。
それを発見・提唱したのは、米国ペンシルバニア大学の精神科医アーロン・T・ベックとそのチームでした。
ベックは1963年にうつ病の認知療法を創案した研究者です。
(『うつの壁』より引用)
ベックが生み出した認知療法は、その後、行動療法と結びつき、現在の認知行動療法へと発展していきました。
人間ですから、誰でも悲観的になることはあります。
ただ、うつ病の方は悲観的になっている時間が長く、考え方もかなり偏ってしまっています。
その偏りを少しずつ正していくための方法が、認知行動療法です。
認知行動療法には様々な方法がありますが、本書では、私たちにも手軽にできて効果を実感しやすい方法が紹介されています。
同じ章の『◆「いいことしか書かない日記」をつけてみましょう』です。
もとになっているのは、うつ病の治療などに使われる「DTR(非適応的な思考の記録)」という手法です。
患者がカウンセラーの指導を受けながら、自分の感情や思考を書き出して客観的に評価し、思考の歪みをはっきりさせていきます。
著者は、この方法はカウンセラーの指導がなくても十分に使えると言います。
要するに、日記をつければいいのです。
文章に書き起こすと、自分の感情や思考、行動を客観的に見直すことができます。例えば、今不安に思っていることを文章にすると、中身を可視化できます。すると、それだけで不安感情が消えていくことがあるのです。
私がおすすめしたいのは、「いいことしか書かない日記」をつけることです。日々の出来事の中から、不快な話や落ち込むような話は一切書かず、明るい話だけを綴るのです。
(『うつの壁』より引用)
私が1年以上続けた「いいことしか書かない日記」
実は、私もこの「いいことしか書かない日記」に挑戦したことがあります。
本書で紹介されている数は1日3個ですが、私は毎日10個書くことにしていました。
なぜ10個なのかというと、無理やりにでもいいことをひねり出すことに意味があるからです。
「朝起きられた」「遅刻しなかった」「ご飯がおいしかった」など、3個くらいならすぐに書けます。
ところが10個となると、6個目か7個目あたりで大抵の人は息切れします。
それでも無理やりひねり出して、1日10個の「いいことしか書かない日記」を、私は1年以上毎日書き続けました。
すると、どうなったか。
「今日は日記に何を書こうか」と、日頃から自然に考えるようになったのです。
つまり、悲観的に考えてしまう癖がかなり弱まりました。
日記を始める前の私は、絵に描いたようなネガティブで悲観的な人間でした。
何か嫌なことがあると、「やっぱり」が口癖でした。
「やっぱり」という言葉が出てしまうのは、自分が傷つかないように、あらかじめ予防線を張っているからです。
「嫌なことを先に想定しておけば、実際に起きても心の準備ができているから傷つかない」。
そう考えて、私はいつも悲観的なことばかり考え、予防線を張り続けていました。
ですが、予防線を張り続けても何も楽しくありません。
嫌なことを自分で先に想像して、わざわざ疑似体験しているようなものです。
今振り返ると、あれは自分で自分を傷つける行為だったと思います。
「自分が傷つかないために」と生まれた考え方でしたが、傷つかないどころか、自分で自分を傷つけていただけだったのです。
そんな私の悲観的な考え方を変えてくれたのが、「いいことしか書かない日記」でした。
続けるためのコツ
1年以上、毎日書き続けた経験から言えるのは、最初から完璧を目指さなくても大丈夫だということです。
「いいことしか書かない」と聞くと、入手が難しいライブのチケットが当選した、といったすごく嬉しかった出来事を書こうと、最初のうちは意気込んでしまいがちです。
しかし、最初は本当に些細なことで十分です。
先ほど挙げた「朝起きられた」「遅刻しなかった」「ご飯がおいしかった」くらいの、「自分にとっては少しでもいいことだった」と思える出来事で構いません。
書く数が少なすぎると惰性で終わってしまい、効果を感じにくくなります。
「ちょっと無理して書き出せば届きそうな数」に設定するのがおすすめです。
私の場合は10個でした。
まずは10個で挑戦してみて、あなたなりの「ちょっと無理すれば届く数」に調整してみてください。
その日の出来事を振り返り、無理やりにでも思い出して書き続けていくうちに、悲観的な考え方は少しずつ和らいでいきます。
考え方や物の見方を変えるのは、大変なことです。
一日や二日で変えられるものではありません。
人の考え方は、これまで生きてきた長い年月をかけて形づくられてきたものです。
すぐに変えようとするのは至難の業で、長期戦になると覚悟したほうがいいでしょう。
ですが、そんなに肩肘を張る必要もありません。
張り切りすぎると息切れして、続けられなくなってしまうのがオチです。
毎日少しずつでいいので、行動に移して続けることが大切です。
うつ病を「治してもらう」から「治める」へ
本書では、「いいことしか書かない日記」のほかにも、悲観的な考え方を改める方法がいくつも紹介されています。うつ病に関する正しい知識を、精神科医である著者から、さらに詳しく学ぶことができます。
悲観的な考え方を少しでも変えたいと思っているなら、そしてこの記事を読んで、うつ病を自分の力で「治めて」いこうという気持ちが生まれたなら、ぜひ本書を手に取ってみてください。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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こちらの記事は「心理的な抑圧を緩和する」に分類される記事です。
「心理的な抑圧を緩和する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(心理的な抑圧を緩和する)をご覧ください。


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