公益社団法人ACジャパンの広告のテーマにもなった言葉
公益社団法人ACジャパンの広告と言われると最初に何の広告を思い浮かべましたか?
テレビやラジオのCMで拝見する機会が多いACジャパンの広告ですが、短いながらもメッセージ性のある内容で頭に残りやすいですよね。
最近だとレジで支払いに手間取っているおばあさんに若者の男性が声をかける「寛容ラップ」と、昔話の桃太郎の冒頭でおばあさんが川から流れてきた桃を拾い上げるとネット上でよく見かけるバッシングをされてしまう「苦情殺到!桃太郎」が印象深くて私のお気に入りです。
今まで数多くの広告を世に送り出してきたACジャパンですが、その中にこんな広告があります。
2001年度に作成された広告で、タイトルは「チャイルドマザー/チャイルドファザー」です。
内容は部屋の中で赤ん坊が泣いているにも関わらず、あやそうともせずに部屋に座り込んで口におしゃぶりをくわえている母親、あるいは父親の映像が流れ、最後に「生むだけで親になれるわけじゃない」という文章が差し込まれるというのが一連の流れです。
内容もそうですが映像も全体的に暗く視聴者からの批判もあり放送禁止にまでなってしまったこのCMですが、放送された当時はチャイルドマザーとチャイルドファザーに関連のあるアダルトチルドレンという言葉もよく見かけることもあり、人々の関心と注目を集めていました。
現在では全く見かけなくなった言葉であるアダルトチルドレンですが、その言葉と正しい意味を覚えている方はどれだけいるのでしょうか。
今回ご紹介する『なんとなく怖い…対人関係の傷みを癒す アダルトチルドレンと愛着障害』はそのアダルトチルドレンを題材にした書籍です。
「アダルトチルドレン」とは何か
よく誤解されがちなのですが、アダルトチルドレンとは「大人になりきれていない大人」や「子供っぽい大人」という意味ではありません。
子供が子供として安心してその場所で伸び伸びと自分を育てることが出来ない機能不全の家族のもとで子供が育ち、その影響で大人になってからも仕事やプライベートにおける人間関係で生きづらさを感じている人のことを指します。
そしてこの機能不全の家族である、父親と母親のことをチャイルドファザーとチャイルドマザーと当時は呼ばれていました。
本書ではアダルトチルドレンのカウンセリングを長年行ってきた著者の外川智子さんが、実際にカウンセリングの中で出会ってきたアダルトチルドレンの方々の様々な考え方や気持ちを解説を付けて代弁し、その思考に至るまでの過程と現在においてどの様なことが生活を送るうえで障害になっているかがわかりやすく書かれています。
本書で紹介されるアダルトチルドレンの方々は過酷な幼少期を過ごされており、そのような環境から受ける影響は大人になっても根深く残るものであることを痛感させられます。
ですが、大人になってから感じている生きづらさに関して「このままじゃだめだ」とか「今の自分をなんとかしたい」と向き合い、自らの意志でカウンセリングに行くことを決意して行動に起こすのがどれだけ勇気のいることかが認識できます。
本書の帯にも内容にも書かれている言葉でとても印象的な言葉があります。
あなたのせいではなかったとしても、自分の傷みは自分が向き合わなければ変えていくことはできないのです。
(『なんとなく怖い…対人関係の傷みを癒す アダルトチルドレンと愛着障害』より引用)
アダルトチルドレンの方々は幼少期に過酷な環境で育ち、そこから抜け出して自立した大人になった今も生きづらさを感じています。
その原因は親のせいであることは自明なのですが、今も生きづらさを抱えている自分がそのことと向き合い変わらなければ、自立して親から離れた場所に環境に身を置いたところでその根底にある思いや考え方はずっとついて回ります。
ですが、他人のせいにしても何も変わらないのはアダルトチルドレンの方々だけではなく、私たちも同じです。
何か問題を抱えているときに「相談相手に全てを何とかしてもらいたい」と解決を相手にゆだねたり、依存するような考えでは、仮に相手がいくら自分に手を尽くしてくれても自分自身を変えることはできません。
あくまで相談相手は補助的な役割であり、自らの意志で問題と向き合い、行動を起こすことに意味があるのです。
アダルトチルドレンの方々がどのような幼少期を過ごされて、大人になった今もどのような心境で日々を過ごしているのか、そして自分を変えるためにカウンセリングを通してどのように変わっていったのかを「根源は他人であるが、そこから時間が経過した現在も問題を抱えている人が解決に向かう姿勢と心構え」を本書を読んで学んでみてはいかがでしょうか。
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