あなたの気持ちがこの記事を書いた私にわかる理由
人と話すのが怖い。
口下手なことを自覚している人が、心の中でよく思っていることです。
なぜそう言い切れるのかと言うと、私自身も口下手だからです。
人と話すのが怖いから、人と話すことを避けてしまう。
すると、その怖さは風船のようにますます膨れ上がっていきます。
一時的には怖さを避けられるかもしれません。
ですが、社会の中で生きている以上、人との関わりは避けては通れません。
そこから逃げ続けても、結局どこかで袋小路に迷い込んでしまいます。
このタイトルが気になってこの記事を開いたあなたなら、きっとその気持ちがわかるはずです。
とはいえ、あなたを責めたいわけではありません。
誰も好きで口下手になったわけではないことは、私にもよくわかります。
そう言い切れるのも、私自身が過去に同じ経験をしたからです。
「そんな自分を変えたい」と思ったから、今この記事を読んでくださっているんですよね。
それなら、いきなり話し方を学ぶよりも、まずは話す前の心構えから整えてみませんか。
人と話すのが怖いのは、話す前から「どう思われるだろう」と、心の矢印が自分に向いてしまっているからです。
その矢印を相手に向け直す、いちばん身近な手がかりが、あなたの「声」です。
今回ご紹介する『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』(かんき出版、2025年2月刊)は、話す前の心構えから、相手の本音を引き出す聞き方、声の出し方まで、人との会話をわかりやすく教えてくれる本です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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31歳でキャスターになった著者も、最初は自分のことばかりだった
著者の田中知子さんは、大相撲愛好家のフリーアナウンサーです。
大学を卒業後、リクルートの求人広告代理店で飛び込み営業を経験し、未経験から31歳でNHK青森放送局のキャスターになりました。
その後は「ニュース シブ5時」のディレクター兼リポーターとして大相撲を取材し、現在はコミュニケーション講師としても活動しています。
人前で話す仕事を2つも経験している人ですから、「自分とは生まれ持った才能が違う」と思われたかもしれません。
ですが、本書には、著者が最初から人と話すのが得意だったわけではないことが何度も出て来ます。
初対面の人と何を話せばいいのか、口下手な自分が疲れずに人と話すにはどうすればいいのか。
講演などでよく受けるこうした質問について、著者は「実はこれ、私も同じように悩んでいたことなんです」と打ち明けています。
著者によると、人と話す力は後天的に努力して身に付けた技術であり、私たちにも扱えるものだそうです。
アナウンサーは新卒で採用される人が多く、対面のコミュニケーションでズレたり、ぎこちなく感じるのが正常です『「伝える」極意 思いを言葉にする30の方法』の記事で紹介した草野仁さんもそうでした。
営業を経て31歳でキャスターになった著者は、遅咲きの経歴の持ち主です。
著者がアナウンサーを目指したのは28歳の時でした。
友人の結婚式の司会をしたり、声を褒められたりして、人前で話す楽しさを知ったことがきっかけです。
3年間オーディションを受け続けて、ようやくキャスターに合格しました。
ところが、意気揚々と始めた仕事は、うまくいかないことの連続だったそうです。
加えて、慣れない生放送で毎日極度の緊張。
「噛まずに伝えられるかな、私うまく出来るかな」とばかり考えていました。
そんな様子を見かねた先輩から、「田中は自分のことばかり気にしている、自分の見られ方ばかり気にしている」と指摘され、ハッとしました。
(中略)
心の矢印は常に自分にしか向いていなかったのです。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
その後、街で「見ているよ」「応援しているよ」と声を掛けてくれる視聴者に出会い、著者は画面の向こうにいる人を思い浮かべられるようになります。
すると、心の矢印は少しずつ、自分から視聴者のほうへ向いていきました。
人と話すのが怖いのは、心の矢印が自分に向いているから
先輩の言葉は、私たちにも当てはまるのではないでしょうか。
顔を合わせただけで、相手があなたを「この人、口下手だな」と判断することはできません。
話す前の段階で口下手かどうかを知っているのは、本人だけです。
それなのに私たちは、相手が何も判断していないうちから、「会話がつまらないと思われたらどうしよう」「うまく話せなかったらどうしよう」と考えてしまいます。
この状態こそ、心の矢印が自分に向いている状態です。
頭の中で作り上げた架空の評価ばかりを気にして、目の前の相手が本当はどう思っているかが見えていません。
著者はキャスターとして、聞いている人がホッとできる空間を作りたいと考えるようになりました。
本書の言葉を借りれば、「まるでかまくらみたいな丸くて暖かいドーム」です。
心の壁を低くし、会話がするすると始まり、話が盛り上がり、時に聞くべきことをしっかり聞ける。
安心感と信頼感で満たされるドームです。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
本書は、相手とこのドームを作れれば、次第に本音で話せるようになると説明しています。
あなたは人と話す時に、相手が安心感と信頼感で満たされているかを意識したことはありますか。
私はこの文章を読んで、人と話す時にそういった空間を作ることを、まったく意識していなかったことに気付きました。
もちろん、「場の空気を悪くしないように」「雰囲気を壊さないように」と気を付けたことはあります。
しかし、「話している空間を安心感と信頼感で満たそう」とは考えたことがありませんでした。
正にこれが、心の矢印が自分に向いている状態です。
人と話すのが怖いと、話す前から心の矢印は自分に向いてしまいます。
そうなると余裕がなくなり、相手のことまで意識が回らなくなるのです。
では、話す前に生まれてしまう怖さには、どう向き合えばいいのでしょうか。
話す前の怖さは、「その先のちょっと楽しいこと」で和らぐ
本書の4章「口下手さんでも思い通りに話が進む聞き方」では、苦手な人との会話を前にした時の対処法を、次のように紹介しています。
「緊張するし、出来ることなら避けたい」と思うことも。
そんな時は、その先のちょっと楽しいことを想像してみて欲しいのです。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
私たちは人と話す前から、「失敗したらどうしよう」「失礼なことを言ったらどうしよう」と、起きてもいないことを悪い方向に考えてしまいがちです。
著者はその真逆で、話した先にある楽しいことを想像し、むしろ未来に期待しています。
そう思えるようになったきっかけは、社会人1年目の飛び込み営業でした。
本書によると、著者は毎日200件以上、飛び込み営業をしていたそうです。
営業をすれば断られ、邪魔者扱いされ、罵倒されることもしばしば。
扉を出た瞬間、悲しくて廊下でうずくまって泣いたこともあったといいます。
それでも続けていると、人生初の受注や、飛び込みでしか味わえない面白い出会いが生まれていきました。
大変さよりも楽しさの方が勝って、「今日はどんな人に出会えるんだろう」といつしか初対面で話すのが楽しいと思えるようになってきました。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
とはいえ、私たちが著者と同じように、知らない人に毎日200回も話しかける必要はありません。
大切なのは、その考え方です。
今はまだ、「本当にそんなことが自分にできるのかな」という不安のほうが大きいはずです。
不安になるのは、傷つきたくないからではないでしょうか。
勇気を出して話しても、相手から邪険に扱われて傷つくのが怖い。
心の中で、そう思っているのではないでしょうか。
扉に手を掛けただけで、あなたはもう変わっている
本書は、人に話しかけることを「扉を開ける」ことにたとえています。
扉を開けないともったいない。
開けて何もなくてもそれでいいのです。
(中略)
失う物はなく、得られる物だけなのです。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
勇気を振り絞って扉を開けたのに、中に何もなければがっかりするでしょう。
ですが、本当に何も得られなかったのでしょうか。
今までのあなたなら、扉に手を掛けようともしなかったはずです。
それが今回は、勇気を出して扉に触れられた。
それだけで、あなたはもう今までとは違うあなたに変わっています。
結果だけから何かを得ようとするのではなく、扉に手を掛けた過程にも目を向ける。
そう見方を変えれば、失う物は何もなく、得られる物だけだと気付けるはずです。
それに、あなたが開けられる扉はひとつだけではありません。
人の数だけ、扉はあります。
一度開けられたのなら、ほかの扉だって開けられるはずです。
たとえ開けられなくても、どうすれば次は開けられるのかを考えられるようになります。
そうやって扉を開け続けていけば、「その先のちょっと楽しいこと」も、より具体的に想像できるようになっていきます。
著者は、NHKで大相撲を取材した時も、同じ思いで現場に向き合いました。
男性ばかりの世界に女性の取材者が一人という、完全にアウェイな環境です。
最初は声を掛けることすらためらわれ、朝稽古の張り詰めた空気に心臓がビリビリしたといいます。
現場の怖さはあるけれど、その先にどんな世界が広がっているのかを知りたい。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
もともと大相撲ファンだったこともありますが、心の矢印が相手に向けられるようになっていたからこそ、そう思えたのでしょう。
心の矢印を相手に向けて、その先にあるちょっと楽しいことを想像する。
その心構えで臨めば、人と話す前の怖さは少しずつ薄れていきます。
声は、心の矢印を相手に向けるいちばん身近な手がかり
とはいえ、頭ではわかっていても、いざ人と話そうとすると今度は緊張してしまい、覚えたことを忘れてしまうかもしれません。
話す前は怖さで不安になり、話し始めると緊張で頭が真っ白になる。
大丈夫です、その気持ちも私にはよくわかります。
そんな時は、あなたの声に意識を向けてみてください。
本書の5章「声の出し方ひとつで話をコントロールする方法」で、著者は声を出す時に意識していることを、次のように明かしています。
私は声を出す時にこんなことを意識しています。
それは丸く円を描くように言葉を発するということ。
この意識だけで柔らかい声になるんですよ。
(中略)
言葉はこちらの都合で相手に届けるものではなく、相手が受け取れて初めて届くもの。
(中略)
言葉は投げる物ではなく、贈り物です。
(『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』より引用)
本書では、夫に「早くゴミ出して!」と言う時の直線的で強い声と、ゴミを出してくれた夫に「ありがとう」と言う時の丸い声を比べています。
剛速球を投げつけられると思わず避けたくなりますが、フワッと投げられたボールなら、しっかりキャッチできます。
言葉も同じで、相手が受け取りやすい形で届けて、初めて伝わるのです。
私自身、話す内容や自分がどう見られるかばかりに気を取られて、声のことはすっかり忘れていました。
ですが、そもそも声がなければ会話は成り立ちません。
人と話すのが怖い時、私たちは「自分が」どう思われているのかばかりを気にしています。
そこで声を意識してみると、「相手が」聞き取りやすい声になっているだろうかと、自然と相手のほうに意識が向きます。
つまり、声に意識を向けることは、自分に向いていた心の矢印を、相手へ向け直すことでもあるのです。
心の矢印という目に見えないものを、声という形で扱えるところに、この方法の良さがあると私は考えています。
もし今まで声を意識していなくても、大丈夫です。
これから意識して、少しずつ変えていけばいいんです。
その変化をあなた自身が感じられるようになった頃には、人と話す怖さや緊張が、前より小さくなっていることに気付けるでしょう。
悩みを話す最初の一言も、丸く届けてみる
人と話すのが怖い気持ちは、悩みを誰かに打ち明ける時に、いちばん強くなるのではないでしょうか。
「こんなことを話したら、どう思われるだろう」と、心の矢印がいつも以上に自分へ向いてしまうからです。
私自身、精神的にかなり疲れ果てていた時期に、話を聞いてもらうことで心が軽くなった経験があります(その時のことはこちらの記事に書いています)。
扉を開けた先には、話す前には想像できなかった軽さが待っていることもあるのです。
まずは今日、誰か一人に「ありがとう」を、相手に向けて丸く描くつもりで言ってみてください。
家族でも、お店の店員さんでも構いません。
それができたら、悩みを話す時の最初の一言、たとえば「最近ちょっとしんどいことがあって」も、同じように丸く届けてみましょう(話し始めの一言についてはこちらの記事でも紹介しています)。
ここまでは、主に人と話す前の心構えを見てきました。
実際に話し始めてから、どうすれば相手の本音を引き出し、会話を円滑に進められるのかは、本書に詳しく書かれています。
あなたが人と話すことに怖さを感じないように、そして話した先にある扉を開けられるように、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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こちらの記事は「悩みを人に話す」に分類される記事です。
「悩みを人に話す」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(悩みを人に話す)をご覧ください。


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