ナンバーワンしか生き残れない自然界で、雑草が生きていける理由
周りと比べて、どこでも一番になれない自分を責めてしまうことはないでしょうか。
今回ご紹介する本によると、植物も含めて、生き物の世界ではナンバーワンしか生き残れません。
一番になれない自分を責めている時に聞くと、さらに追い詰められるような言葉です。
けれど、本書はその後に、ナンバーワンになる方法は一つではないことも教えてくれます。
生き物にはそれぞれ、ほかの生き物と争わずに自分がナンバーワンになれる場所があります。
道端に生えている雑草は、実は植物の中でも競争に弱い植物です。
それでも雑草が生きていけるのは、強い植物と同じ場所で戦わずに、自分がナンバーワンになれる場所を選んでいるからです。
本記事では、本書の「ナンバーワンしか生き残れない」という言葉の意味と、雑草が生き残っている場所の選び方を、私達の悩みにつなげて紹介します。
『雑草はなぜそこに生えているのか』は、「たくましい」と思われがちな雑草の本当の姿から、弱い者が生き残る戦略を教えてくれる本です。
「世界に一つだけの花」がきっかけで、雑草に目を向けた
「世界に一つだけの花」は、2003年に発売されたSMAPの代表的な曲で、作詞・作曲は槇原敬之さんです。
競争して一番にならなくても、一人ひとりにかけがえのない良さがあることを歌った曲です。
仕事や学業など、何かと競争してナンバーワンを目指さなければならない社会人や学生など、どの世代の心にも届く曲でしょう。
競争の中に埋もれて意識して来なかった「自分らしさ」とは何なのかを、改めて考えさせてくれます。
この曲がきっかけで、それまで花や木にあまり興味がなかった私も植物に目を向けるようになりました。
私が普段目にする植物と言えば道端に生えているタンポポぐらいの雑草ですが、曲が発売された当時は、そんな雑草を見ても歌の影響で感動していたのをよく覚えています。
ところが本書を読んで、私は雑草のことを何も知らなかったのだと気付かされました。
雑草は、実は「たくましい」植物ではない
本書の著者の稲垣栄洋さんは、雑草生態学を専門とする農学博士で、農林水産省などを経て、静岡大学大学院の教授を務めています。
本書は2018年1月に、ちくまプリマー新書から「弱さからの戦略」という副題で刊行されました。
若い読者に向けたシリーズの一冊なので、植物の基礎的な知識から丁寧に説明されていて、スラスラ読めます。
本書は雑草という言葉の定義から始まり、「雑草は踏まれても踏まれても立ち上がる」のような、雑草に持たれがちなイメージをことごとく覆していきます。
本書によると、雑草は抜いても抜いても生えてくるしぶとい植物だと思われていますが、実はとても弱い植物です。
弱いからこそ、生き残るための驚くような戦略を持っています。
生物の世界では、ナンバーワンしか生き残れない
どの解説も興味深い内容でしたが、一番印象に残ったのがこの一文です。
生物の世界の法則では、ナンバー1しか生きられない。
(『雑草はなぜそこに生えているのか』より引用)
本書でもSMAPの「世界に一つだけの花」を話題に出した後にこの一文が続くので、非常に衝撃を受けました。
ただし、本書はすぐに次のような問いを立てています。
ナンバー1しか生きられないのであれば、この世には一種類の生き物しか存在できないことになる。
それなのに、自然界を見渡せば、さまざまな生き物が暮らしている。
(『雑草はなぜそこに生えているのか』より引用)
ここで一つ、確かめておきたいことがあります。
本書が言っているのは、生き物が「生き残れるかどうか」の話であって、「生きる価値があるかどうか」の話ではありません。
ナンバーワンになれなかった自分には生きる価値がない、という意味ではないのです。
そのうえで、ナンバーワンしか生き残れない自然界に、なぜこんなにも多くの生き物が暮らしていられるのかを見ていきましょう。
オンリーワンとは、ナンバーワンになれる場所のこと
本書によると、同じ場所で同じものを奪い合う生き物同士は激しく競い合い、最後には一番強いものしか残りません。
これは「ガウゼの法則」と呼ばれています。
それでも多くの生き物が暮らしていられるのは、それぞれがほかの生き物と競い合わずに、自分が一番になれる場所を持っているからです。
この場所を、生物学では「ニッチ」と呼びます。
本書によると、ニッチはもともと、寺院の壁に飾り物を置くために設けられたくぼみのことで、一つのくぼみには一つの飾り物しか置けません。
同じように、一つのニッチで暮らせるのは一種類の生き物だけです。
ニッチは住む場所だけではなく、食べるものや、暮らす環境の条件のこともあります。
つまり、ナンバーワンになる方法は一つではないということです。
みんなが同じ一つの物差しで一番を競えば、ナンバーワンは一つしか生まれません。
けれど、物差しが違えば、それぞれの場所にナンバーワンがいられます。
私は、オンリーワンとは、ナンバーワンになれる場所のことなのだと受け取りました。
弱い雑草は、強い植物と戦わない場所を選んでいる
では、競争に弱い雑草は、どこでナンバーワンになっているのでしょうか。
本書によると、雑草はほかの植物との競争に弱いので、強い植物が生い茂る森のような豊かな場所には生えません。
雑草が生えるのは、道端や畑のように、人に踏まれたり草刈りをされたりして、環境が何度も変わる場所です。
強い植物にとっては住みにくい場所でも、変化に強い雑草にとっては、ナンバーワンになれる場所なのです。
本書はイギリスの生態学者グライムの考え方を紹介し、植物の生き残り方を、競争に強いもの、厳しい環境に耐えるもの、予測できない変化に強いものの三つに分けています。
雑草は、このうち予測できない変化に強いタイプだといいます。
雑草は、戦わないことを選んだ植物でもあります。
私が道端のタンポポを見て感動していたのは、雑草が踏まれても負けずに頑張っているように見えたからでした。
けれど実際には、雑草は強い植物と同じ土俵で頑張っていたのではなく、自分が一番になれる場所に、ちゃんと生えていたのです。
一番になれないのは、物差しが一つしかないからかもしれない
私達がナンバーワンになれずに苦しくなるのは、多くの場合、みんなが同じ一つの物差しで比べられる場所にいる時です。
学校の成績や仕事の成果、周りからの評価など、一つの物差しで測られる場所では、ナンバーワンは一人しかいられません。
その物差しで一番になれない自分を、私達はつい「自分が弱いからだ」と責めてしまいます。
私自身も、苦しかった時期を振り返って、自分が弱かったのではなく、物差しが一つしかなかったのだと気付いたことがあります。
雑草が強い植物と戦わない場所を選ぶのは、逃げではなく、弱さから生まれた戦略です。
一つの物差しで一番になれないからといって、あなたに生き残る場所がないわけではありません。
まだ、あなたがナンバーワンになれる場所を見つけていないだけです。
望みが絶たれた道を歩まず、新しく開けた道に進むと決めることも、自分の場所を選ぶことの一つです。
今日できる一歩:自分を測っている物差しを書き出す
最後に、今日できる一歩です。
紙とペンを用意して、次の三つを書き出してみてください。
一つ目は、最近、誰かと比べて苦しくなった場面です。
二つ目は、その時に自分を測っていた物差しです(成績、収入、仕事の速さ、人付き合いのうまさなど)。
三つ目は、その物差しとは関係なく、自分が気付けば時間を忘れていることや、無理をせずに続けられていることです。
三つ目に書いたものが、あなたがナンバーワンになれる場所の手がかりです。
誰かに勝てるかどうかは関係ありません。
大切なのは、ほかの誰かと同じ物差しで比べなくて済む場所であることです。
本書には、雑草が厳しい環境を生き抜くための発芽や花、タネの戦略、そして最終章の「本当の雑草魂」まで、弱い者が生き残るための知恵が詰まっています。
私達が思い描いていた雑草魂とは違う、雑草の本当の強さを知りたい方は、あなたの考えた答えと照らし合わせながら、本書をぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
こちらの記事は「心理的な抑圧を緩和する」に分類される記事です。
「心理的な抑圧を緩和する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(心理的な抑圧を緩和する)をご覧ください。


コメント