プロのスポーツ選手のメンタル術は私達にも適応出来るのか
私達の普段の生活に身近な存在であるスポーツ。
スポーツ観戦は娯楽の一種としても馴染みがあります。
プロのスポーツ選手は常に人前に出て、結果を出しているからメンタルが強い。
そう考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際にスポーツ選手がメンタルに関する自叙伝を出している方は多いです。
私はそういった類の書籍を書店等で見かける度に「彼らは幼少期から試合に出ているからメンタルが強いのであって、自分が読んでも参考になるのだろうか」と思い、手を出していませんでした。
ですが、そんな私の考えを大きく変えてくれた一冊の書籍に出会いました。
それが今回ご紹介する『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
こちらの書籍はAudibleでもご利用頂けます。
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下のリンクから該当ページに移動しますので、Audibleに興味を持たれた方はこの機会にぜひご利用してみてください。
Audibleの公式サイトはこちらからどうぞラグビーとはメンタルゲームである
著者の姫野和樹さんはプロのラグビー選手です。
中学生の時にラグビーに出会い、高校、大学、そして社会人のチームに所属しラグビーを現在も続けています。
本書ではラグビーを中心に話が進んでいくのですが、あまりラグビーをよく知らない方が想像しやすいように、ラグビーがどんなスポーツか簡単にご説明します。
ラグビーとは楕円形のボールを相手陣地の一番奥にあるゴールラインまで運ぶスポーツです。
得点はトライとキックの2つの方法で点を獲得することが出来ます。
トライとは相手チームのインゴールにボールを地面につけると得点が入り、キックは蹴ったボールが相手チームのゴールポストのクロスバーを越えると得点が入ります。
トライは5点ですが、キックは状況によって点数が変わり2点か3点のどちらかになります。
試合時間は前半40分、後半40分の計80分です。
試合人数は1チーム15人で相手チームを含めると計30人です。
だいぶ簡略しましたが、以上が基本的な説明です。
上記の通り、ラグビーは試合時間が決まっているので圧倒的なスコア差が出てしまうと逆転出来ません。
野球やテニスなら試合時間が決まっておらず、追い込まれていても終盤で逆転出来る可能性がありますがラグビーでは不可能です。
もし仮にスコアで圧倒的な差を付けられて試合終盤まで進んでしまった場合、選手は何を考えてプレイしているのでしょうか。
著者は「そういう時は何も考えない、スコアボードを見ないようにする」と答えています。
スコアは過去の物であり、変えられるのは目の前に起きている事だけ。
その様な思い切った判断も必要であると著者は考えています。
そして、その様な状況に追い込まれたり危機的な状況では絶対にやってはいけないことがラグビーにはあります。
それは「どんなに苦しくても膝や腰に絶対に手をついてはいけない」ことです。
理由は対戦相手がその姿を見ると自分が疲れていることを教えてしまう行為だからです。
疲れていることがバレてしまうと相手が勢いづいてしまう。
だから、ラグビー選手はどんなに苦しくても表面上は疲れていないふりをし続けます。
ラグビーは体と体のぶつかり合い、フィジカルバトルだけで勝敗が決まると思われがちですが、実は単純な力比べだけでは相手を上回ることは出来ません。
試合の勝敗を決めているのはメンタルです。
駆け引きが試合の勝敗を分けることもあるので、相手の心を折った方が勝つメンタルゲームだと著者はラグビーをそのように表現しています。
それならば、プロのラグビー選手はさぞかしメンタルの強い人達の集まりだと思いますが、そうではないと本書で否定しています。
アスリートだからラグビー選手だからメンタルが強いということはなく、体と違ってメンタルは鍛えることがとても難しいのだそうです。
では、どのように対処しているのかというと自分の意識を変えることです。
その意識を変えるための行動が本書のタイトルにも使われている「姫野ノート」です。
ノートを書くときに大切なこと
著者がこのノートを書き始めるきっかけになったのは、著者が2017年の社会人1年目、トヨタのチームに加入していきなりキャプテンを任されるようになってからです。
当時のヘッドコーチだったジェイク・ホワイト氏から指名されてキャプテンになりましたが、当然ながら新卒1年目の選手がキャプテンになってとんとん拍子で上手くいくはずがありません。
チームのこともチームメイトのこともわかっていない、何の結果も出していない新人キャプテンの言葉など誰も耳を傾けませんでした。
そんな空回りする日々が4ケ月近く続いたときに、著者が気付いたことやチームを少しでもよくするアイデアをノートに書き出してみようと始めたのが「姫野ノート」です。
姫野ノートを書き始めて、最初に訪れた変化は自身の心境が変わったことです。
ノートを書き進めていく内にチームの事よりも自分のことを書くようになりました。
自分のことを書いていると自分のことを知らなかったことに気付きます。
そして、自分のこともわからないやつにチームメイトのことなんてわかるわけがなく、ましてや年齢もキャリアも違う40から50人の大人達をまとめ上げてチームを引っ張っていくことなんて出来るわけがないと思うようになりました。
そこで、自分がどんな人間なのかを自分自身が知らないとダメだと悟ります。
こうしてノートを使って、自分との対話が始まりました。
まず、著者がノートに書き出すのは次の3つ。
自分の状態、メンタルや体がどんな状態なのか。
自分がやらなければいけないこと、そのために必要なこと。
何が出来て何が出来ないのかについても正直に書いていくと、自ずと内容はラグビーのことだけではなくなっていきました。
人として足りない部分や弱さ、人としてこうありたいというのも隠さずに書くようになりました。
「こんな考え方じゃアカン」と思ったことに対してどうしたらいいのか考える。
姫野ノートはそう自問自答を繰り返していくイメージです。
ちなみに、姫野ノートには他人の不満や愚痴は書いたことがないと著者は断言しています。
あくまでも、自分自身と向き合い、対話するための作業であるからだと言及しており、ノートを書く上で大切なことを次のように述べています。
ノートで何よりも重要なことはこうして全て絶対に正直に書くということ。
偽らざる本音、思っていることを全て吐き出さなければいけない。
自分と対話するときにカッコつけたり、取り繕ってしまったり、ウソをついてしまっては書く意味がない。
(『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』より引用)
姫野ノートに限らず、実際にノートに自分の思いや考えを書いてみたことがある方は共感出来るかと思いますが、最初は書こうと思っても何も書けないことがほとんどです。
書き出せない理由は自分の気持ちを吐き出すことに対する躊躇です。
自分と向き合うことが怖いというよりも、自分の心境を書くことに対する恥ずかしさから来ています。
著者が当時姫野ノートに書いていた内容を本書では読むことが出来ますが、著者も人前にこのノートの内容をさらけ出してしまうのは恥ずかしいと答えています。
そんな恥ずかしさを乗り越えてノートを書き続けるとどの様な効果があったのでしょうか。
著者はノートの効果を以下の通り解説しています。
ノートの一番の効果はまず自分を知ることが出来ること。
普通に生活をしていると自分と向き合う時間はなかなかない。
忙しさにかまけて流れて行ってしまうからだ。
でも、おかしいな、違うな、アカンなと感じたときに一度立ち止まって自分と正直に向き合う、考える。
そして、反省して軌道修正する。
それが成長する上でものすごく大切だった。
さらに文字情報にして目で見ることで、自分の中での理解度が格段に上がった。
頭の中のもやもやした考えやイメージが整理されて、はっきりとまとまる。
自分の現状をしっかり把握出来るし、言語化されることで自分のやれることとやるべきことがパッと理解出来る。
自分の頭の中を自分でしっかり理解出来ているから、相手に言葉も伝えやすくなる。
後から読み返せば、自分を自分でレビューすることも簡単に出来る。
すると、自分の変化にも早く気付くことが出来る。
自分のことが見えてくれば、不思議なことで自然と周りのことも見えてくる。
人やチームの些細な変化、おかしいぞということにも気付くことが出来るようになる。
もうひとつ大きな効果があった。
書いた以上はやらなきゃいけないというモチベーションにもなるのだ。
(『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』より引用)
生きていれば悩みはひとつではなく、複数あるものです。
さらに人間の頭の中は膨大な情報量で埋め尽くされています。
膨大な情報の中で複数の悩みが複雑に絡み合い、心理的な負荷が大きくなることで精神的に参ってしまう。
そんな状態は誰しもが経験します。
そんな時はやはり言語化して何かに書き記すのが効果的です。
言語化して文字化して見えるようにすることで複雑に絡み合っていた悩みがほつれていき、ひとつひとつの悩みに対して向き合えるようになります。
そして言語化して文字化することは上記の通り目標に対して自分が取るべき行動を指し示す指針としても応用が効きます。
以前、新しいことに挑戦しても続かないのは現状維持メカニズムが原因です『思考は文字化すると現実化する』の記事の冒頭で大谷翔平選手の目標達成シートを紹介しました。
あのシートもこの姫野ノートと同様に言語化して文字化することで、目標に対してどの様な行動を取ればいいのか明確にしてくれます。
姫野ノートを駆使した著者がその後どの様なラグビー人生を歩んでいったのか。
続きが気になる方はぜひ本書をお読みください。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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