自分のことを「弱い」と思うのなら
あなたは、自分のことを「弱い」と思ったことはありますか?
生きていれば、自分の弱さに出会う場面は必ずあります。
そこで自分の弱さを否定しても、現状は何も変わりません。
私自身、以前はメンタルを「強いか弱いか」という物差しだけで測って、弱い自分を責めては苦しくなっていた時期がありました。
その時のことは、メンタルには自分に合った概念で向き合いましょう『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』の記事に書いています。
私達は、「強いこと」はいいことで、「弱いこと」は悪いことだと考えてしまいがちです。
ですが、その考え方自体が、そもそも間違っているのです。
「弱さ」は、誰にでもあるものです。
この世に「強さ」だけを持っている人はいません。
皆、何かしらの「弱さ」を抱えながら生きています。
だからこそ大切なのは、弱さをなくそうとすることではありません。
弱さを「責めること」と「認めること」を分けることです。
自分を責めるのを止めた時、はじめて自分の弱さを静かに認められるようになります。
そして認められた弱さは、やがてあなたの強さに変わっていきます。
そんな「自分の弱さ」との向き合い方を教えてくれるのが、今回ご紹介する『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』です。
いつも本サイトを訪れて記事を読んでいただき、ありがとうございます。
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ホスピス医から見た「強さ」
著者の小澤竹俊さんは、ホスピス医です。
ホスピス医がどんな仕事なのか、ご存じでしょうか。
あまり聞き慣れない職業なので、「正直よくわからない」と思われたかもしれません。
私も本書を読むまでは、あまりよく知りませんでした。
ホスピスとは、人生の最終段階を迎えた人の痛みや苦しみを和らげ、最期まで穏やかに過ごしてもらうための治療やケアのことです。
日本では、そうしたケアを行う施設のことを「ホスピス」と呼ぶことが多いようです。
小澤さんは、救命救急センターや農村医療に携わった後、1994年から横浜甦生病院のホスピス病棟で働き始めました。
2006年には横浜市に、めぐみ在宅クリニックを開院しています。
24時間365日の体制で、自宅や介護施設で療養する患者さんのもとを訪れ、本書の刊行時点(2022年)で3,800人以上の患者さんを看取ってきました。
そんな著者は、人が最も弱さを感じるのは、死を目前にした時だと語っています。
それまで自分のことを「強い」と思ってきた人ほど、何も出来なくなっていく現実を前にして、必ず弱さを感じるからです。
では、人が思う「強さ」とは一体何なのでしょうか。
本書の『はじめに』で、著者は次のように述べています。
何だか禅問答のようなタイトルですが、ここで私が言う「強さ」は目に見えるわかりやすい強さのことではありません。
(中略)
これらはいずれも目に見えるわかりやすい強さです。
しかし、そうした物はいつか必ず失われます。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
ここで言う「目に見えるわかりやすい強さ」とは、健康や体力、お金、地位や名誉、才能、精神的なタフさなどです。
どれも時間が流れれば、いつか必ず失われていきます。
それでも私達は、「強さ」に憧れます。
自分のことを「弱い」と思えば思うほど、その憧れは強くなります。
では、どんな時に私達は、自分のことを「弱い」と思ってしまうのでしょうか。
ホスピス医から見た「弱さ」
本書は第一章の『弱さこそがその人らしさを形づくる』で、私達が苦しみを味わう場面を挙げています。
試験に失敗した時、失恋した時、仕事で取り返しのつかないミスをした時、大切な人を失った時。
あるいは、「自分ばかりが損をしている」といった漠然とした不安や不満を、日々感じている時です。
そんな時、人は自分を次のように責めてしまいます。
「自分がこうなったのは、自分に力がないせいだ。もっと強くならなければ。」と自分の弱さを責める人もいるでしょう。
こうした思いに苛まれているとき、人は自分の辛さや苦しみばかりに焦点を当て、周りの人に目が向かなくなりがちですし、自分を支えてくれている存在のありがたさに気付くことも出来ません。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
あなたも、自分の辛さや苦しみばかりに焦点が当たってしまった経験はないでしょうか。
自分のことを「弱い」と思えば思うほど、そこに焦点が当たってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。
まず、「焦点が当たっているな」と気付いても、「焦点を変えなければ」と思い詰めなくていいんです。
「考えないようにしよう」と思えば思うほど、人はそのことばかり考えてしまう生き物です。
同じように、「焦点を変えよう」と思えば思うほど、焦点は当たり続けてしまいます。
それならいっそのこと、その弱さを認めて、受け入れてみてはいかがでしょうか。
本書は、弱さを受け入れることについて、次のように語りかけています。
不完全でも、例え何も出来なくても、人は存在しているだけで十分に価値があり、生きている意味があるのです。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
とはいえ、「弱さを認める」と聞くと、心の中で反発する気持ちが湧くのは当たり前です。
本書によると、それは弱さを認めた時に、自分の価値を信じられなくなることを、心のどこかで恐れているからです。
競争に勝つことや、社会の役に立つことに価値が置かれる今の社会では、なおさらでしょう。
でも、もしあなたが「自分は弱い」と思っていても、そのことで自分自身を否定しなくていいんです。
あなたは、存在してくれているだけで価値があり、生きている意味があります。
今こうしてこの記事に出会い、ここまで読んでくださっているあなたに、私はとても感謝しています。
だからどうか、たとえ「自分の弱さ」を感じていても、あなた自身を責めないでください。
それに、あなたがここまで読めているのは、弱さを感じながらも、「自分の弱さを何とかしたい」と思う気持ちがあるからです。
その気持ちを大切に持ち続けることが、あなたの弱さを変えていく原動力になります。
弱さを「責めること」と「認めること」は違う
本書は『ありのままの自分で生きることは、欠点を放置することではない』で、「あなたはあなたのままでいい」という言葉について、次のように述べています。
この言葉は間違いではないのですが、「欠点という弱さをただ放置してもいい」ということではないと私は思っています。
(中略)
決して自分を責めるのではなく、ただ自分が完全な人間ではないこと、あるいは苦しみの原因が他人ではなく、自分の弱さにあることを静かに受け入れる。
それが出来れば、きっと心が穏やかになり、苦しみも和らぐでしょう。
しかし、その上で変えられるものは変えていく向上心を持つことが大事だと私は思います。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
ここで言う欠点とは、すぐ人のせいにしてしまう、嫌なことから逃げてしまう、ミスを指摘されると怒ってしまう、といった誰もが持っている弱さのことです。
自分の弱さを「責めること」と「認めること」は違います。
あなたはこれまで、自分の弱さを責め続けてきたのではないでしょうか。
だから、「自分の弱さから目を背けたい」という思いも、少なからずあるはずです。
しかし、自分の弱さは責めなくていいんです。
ただ認めて、受け入れてあげればいいんです。
そこで「こんな自分はダメな存在なんだ」と否定する必要はありません。
「自分の弱さを静かに受け入れる」とは、自分を否定したり批判したりせずに、あるがままの弱さを受け入れることです。
受け入れられるようになれば、変えられる弱さを変えるための行動も、次第に出来るようになります。
自分を責める言葉が心と脳にどんな影響を与えるのかは、感情を抑え込むよりも、見方を変えることで心に落ち着きを取り戻せます『考えてはいけないことリスト』の記事でも紹介しています。
弱さを変えられるのは、自分しかいない
本書は『克服した弱さはいつか自分らしさと自信に変わる』で、読者に一つの問いを投げかけています。
過去に克服してきた弱さは、今あなたの中でどうなっていますか?
それは自信を持って、「私です」と言えるようなあなたという人間の大事な一部分になっていませんか?
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
本書では、朝起きるのが苦手だったけれど今は早起きが気持ちいい、人見知りだったけれど初対面の人とも話せるようになった、といった例が挙げられています。
どんな些細なことでも構いません。
あなたにも、自分の弱さと向き合い、克服してきた経験があるはずです。
ひとつだけ思い出してみてください。
それが、今のあなたの強さになっていることに気付くはずです。
弱さを認め、変えられる弱さは変えようと行動する。
その積み重ねが、弱さから生まれる自己否定の気持ちを薄めていきます。
ただし、それは自分の意思で弱さと向き合い、変わろうとしなければ変えられません。
あなたを変えることが出来るのは、あなただけなのです。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
本書の『あなたに他人を変えられないように、他人もあなたを変えられない』の言葉です。
いくら人から欠点を指摘されても、自分で弱さに気付き、認めていなければ、変えようとは思えません。
一方で著者は、「全ての弱さを克服しなければ」と考えると、それはそれで自分を追い詰めてしまうとも述べています。
どうしても変えられないものは、静かに受け入れる。
変えられるものは、変えていく。
そのスタート地点が、自分の弱さを認めることなのです。
人の手は借りていい、でも委ねなくていい
本書は、変えられる部分は人の手も借りながら変えていけばいい、とも書いています。
人の手を借りるのは、いいことなんです。
しかし、相手に「弱い自分を変えて欲しい」と委ねても、自分は変われません。
自分の弱さを変えることにおいて、相手はあくまで補助の役割です。
すべてを相手に委ねることは出来ません。
この「相談相手は補助の役割」という考え方は、「自分の傷みは自分が向き合わなければ変えていくことはできないのです。」『なんとなく怖い…対人関係の傷みを癒す アダルトチルドレンと愛着障害』の記事でも書いています。
ただ、相手に委ねたくなる気持ちもよくわかります。
それは、相手に「自分の気持ちをわかって欲しい」という思いが強いからでしょう。
なぜ人は相手に「わかって欲しい」と思うのか
本書の第二章『わかってくれる人がいると強く生きられる』では、その思いについて次のように書かれています。
苦しみや痛みを抱え、弱い状態にある人は皆、「自分の気持ちをわかってくれている」と思える誰かを求めています。
もちろん相手が100%、自分の気持ちをわかってくれているかどうかは誰にもわかりません。
ただ「誰かにわかってもらえた」と感じることで、多くの人は苦しみの中でも穏やかさを取り戻し、前向きに生きるきっかけを掴むことが出来ます。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
あなたも今、抱えている悩みを「誰かにわかって欲しい」と思って、この記事を読まれているのではないでしょうか。
そう思うことは、悪いことではありません。
人間なら誰もが持つ、当然の思いです。
病気や怪我で辛い時、失恋した時、仕事がうまくいかない時。
痛みや状況は変わらなくても、気持ちをわかってくれる誰かがいるだけで、辛さが和らいだ経験はないでしょうか。
本書はそうした誰かの存在を、次のように表しています。
苦しみという暗闇の中で、わかってくれていると思える誰かの存在が、前を向いて生きていくための、一筋の光となるのです。
(『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』より引用)
あなた一人で、自分の弱さに無理に向き合おうとしなくていいんです。
一人では向き合えないと思ったのなら、素直に人の手を借りてみましょう。
大丈夫です。
相手に自分の気持ちをわかってもらうことは、自分の弱さをすべて相手に委ねることにはなりません。
あなたが自分の意思で、自分の弱さを変えるために起こした、立派な行動です。
ここまで読んでくださったあなたなら、話を聞いてくれる相手の役割も、もう十分にわかっているはずです。
それでも、いきなり人に自分の弱さを話すのは、ハードルが高いと感じるかもしれません。
それなら、まずは本書を読んでみることから始めてみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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こちらの記事は「心理的な抑圧を緩和する」に分類される記事です。
「心理的な抑圧を緩和する」に関して詳しく知りたい方は、まとめ記事一覧表(心理的な抑圧を緩和する)をご覧ください。


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