SNSとの距離感
SNSの発展で私達は遠く離れた場所にいる人でもすぐにその近況を知ることが出来ます。
国境を越えて、世界各地で同じ趣味や趣向を持った人と繋がることが出来て、初対面での出会いから仲良くなり友達になるまでの過程の幅と速度が飛躍的に向上しました。
SNSを所有している方で、人との出会いというのは当たり前のことであり、以前ほど怪しい印象を持っていた方は大幅に減少したと思います。
良い方向に使用されればとても素晴らしいコミュニケーションツールなのですが、悪い方向に使用されてニュースになることも残念ながら多くあります。
ニュースになる内容は当然人間が犯しがちな間違いだらけなのですが、動機に関しては「そうなってしまうのも仕方がない」とSNSを使用したことがある方なら理解出来る危険性ばかりなのではないでしょうか。
SNS上では本来はその人と仲良くなってから知ることが出来ないパーソナルな一面を、一般公開の設定になっていれば誰でも見ることが出来て、いいねやコメント等の反応まで相手に返せるのです。
例えば、あなたがモデルで道を歩いている際に見ず知らずの人から「綺麗ですね」と言われても、嬉しさよりも警戒心の方が高くなり身構えることでしょう。
ですが、SNSで自撮りの写真を載せた際に見ず知らずの人からコメントで「綺麗ですね」と言われたら、嬉しさの方が勝るのではないでしょうか。
最近はスパムコメント等の影響で鬱陶しいと思う気持ちがあるかもしれません。
ただ、相手のプロフィール欄がしっかり記入されていてBOTではないことがわかったら、多少なりとも嬉しさを感じられるとは思います。
見ず知らずの人に容姿を褒められるという同じシチュエーションにも関わらず、場所が違うだけで捉え方はだいぶ変わりますよね。
相手との距離感が近く、受け入れられる許容度の器が大きくなるのがSNSの長所なのですが、普段とは違う環境からかこの距離感を誤ってしまい事件になってしまう例は数多くあります。
例えば、近いと感じるがゆえに相手の投稿が自慢のように感じられて、妬んだりするネガティブな感情を持って誹謗中傷を行う人も出て来るからです。
ただ、これはSNSを使用したことのある方ならその場面を必ず見たことがあるかと思いますが、決して他人事ではなく誰もがそうなる危険性があるのです。
そんなネガティブな感情と距離を置く方法を伝授してくれるのが、今回ご紹介する『正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情』です。
「羨み」と「妬み」
本書ではタイトル通り「恨み」を筆頭にそれに関連する「妬み」「羨み」「嫉妬」などのネガティブな感情を、脳科学者の中野信子さんと心理学者の澤田匡人さんが脳科学と心理学の観点からわかりやすく解説しています。
先ほど例に挙げたようにもはや生活の一部になっているほど身近なSNSで、ネガティブ感情が生まれる頻度が特に高いのが「羨み」と「妬み」です。
心理学では、羨みに近い妬みを「良性妬み」と呼び、ネガティブなニュアンスの強い恨みを「悪性妬み」に分けて考えられており、この分類は腫瘍に例えるとわかりやすいと次のように説明されています。
羨みはほうっておいても特に害がないことが多く、良性腫瘍のようなものといえます。一方、妬みのように誰かに対する敵意がにじみ出ている感情は、妬みの対象になった人の不幸を願いつつ、経験している自分自身もつらくなります。このように、妬みは悪性腫瘍のように、心の健康を害する危険性すらあるのです。
(『正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情』より引用)
自己肯定感を高めたいなら、「カメレオン人生」をやめましょう『「自分がイヤだ!」と思ったら読む本』の記事でも触れましたが、SNSで友人が幸せそうにしている投稿ばかりを見続けていると無意識の内に必ずその人たちと自分の人生を比較してしまう瞬間が訪れます。
比較した際に感じている感情が、「羨み」なら大丈夫なのですが「妬み」だと自分自身を苦しめてしまうので、自分の感じ方がどちらが強いのかを見極めるのが重要になります。
その一方で、芸能人など自分とは無縁な人たちの幸せそうな投稿ばかりを見ても、身近な人ほど見ているのが辛くなるような感情は生まれません。
これは何故なのでしょうか。
自分と同等あるいは僅差だと思われる人が、自分が手に入れられないものを手に入れ、自分が届かなかったレベルに先に届いてしまったとき、私たちは、羨んだり妬んだりするわけです。
(『正しい恨みの晴らし方 科学で読み解くネガティブ感情』より引用)
羨みと妬みは子供でも持っていることが研究で判明しています。
Aくんはテストの点数が高いとか、Bくんは運動が出来るなど、先生や両親から会話の話題として出されてしまう影響もあり、子供が周囲と比較をしてしまうことは当たり前のことでしょう。
比較対象を「いいな」と思えば羨みで終わりますが、「ずるい」と思うと妬みが生まれます。
そして妬みを感じたときに大きく分けて「努力する、諦める、攻撃する」の三種類の中から一つを行動に出るのだそうです。
これは大人でも同様に考えられます。
SNSでの投稿に対する反応を見れば確かにこの三種類に当てはめられるでしょう。
特に「攻撃する」の選択肢を選んだ人間が、その後どのような末路を辿るのかを私達はこれまで散々見てきました。
「羨み」と「妬み」といったネガティブ感情を感じること自体は誰しもが通る道であり、子供の頃からずっと根付いているのが人間として当たり前なのです。
その感情に振り回されずに上手に付き合うために本書を読んでみてはいかがでしょうか。
コメント